前年度までに、山口大学医学部附属病院で心臓手術を施術された2歳児から83歳までの26例の患者から採取した心筋幹細胞を用いて、細胞の増殖能、細胞成長因子産生能、細胞老化状態、等を比較検討したところ、患者年齢と心筋幹細胞老化との間に有意な相関性は見出されなかった。このことは、定説となりつつあった「高齢患者由来心筋幹細胞=老化幹細胞」の図式を崩す極めて興味深い結果である。本年度は、qPCR法を用いて、高齢者由来心筋幹細胞と若齢患者由来心筋幹細胞との間で発現変化の見られる因子について比較検討を行った。特に、これまで細胞老化誘導因子として報告されてきた因子に注目したところ、高齢者由来心筋幹細胞においてsFRP1の発現が有意に亢進していることが明らかとなった。sFRP1は、DNA障害により発現が誘発される因子として知られ、事実、我々の検討においても平均値の比較では差は認められないものの、高齢患者ほど心筋幹細胞のDNA障害率が高まっている傾向があることを見出しており、関連性が強く示唆される。
|