研究課題/領域番号 |
15K15512
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩崎 清隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339691)
|
研究分担者 |
植松 美幸 国立医薬品食品衛生研究所, その他部局等, 研究員 (10424813)
山崎 健二 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (30241087)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 拍動循環シミュレータ / ステントグラフト / 大動脈瘤 / 評価科学 / in vitro |
研究実績の概要 |
本研究は,弓部大動脈瘤を対象とした拍動循環シミュレータの開発と,ステントグラフトによる瘤の治療目標達成度を定量的に評価する評価指標を提案することを目的としている.ステントグラフトは,下肢の大腿動脈からカテーテルを介して挿入し,大動脈瘤部位で展開するデバイスであり,その留置形態は血管のアクセス経路の影響を受けると考えられる.そこで,H27年度は患者のCTデータをもとに弓部大動脈瘤モデル,腹部・大腿動脈モデルを作製し,患者の血管走行を具備した先進的な拍動循環シミュレータを開発した.患者CTデータは大動脈の血圧が作用した状態での3次元形状であり,同形態をもとに作製した血管モデルに血圧を作用させると実際の患者の血管より大きく拡張するという課題が生じた.そこで,血管モデルの外側に圧力を作用させる実験装置を開発して,血圧作用下での患者の血管径に調整できるようにした.開発した拍動循環シミュレータを用い,血流に伴う大動脈の血管コンプライアンスをヒト文献値と同等に調整することができた.ステントグラフトの金属骨格の先端部について,拍動流存在下での展開開始時と留置終了時の血管モデル内での位置をマーキングした後にCTで3次元的位置を定量化し,ステントグラフト展開時における血管長手方向のズレ量と血管周方向の回転量を定量化する方法を開発した.開発した拍動循環システムを用い,ステントグラフトによる治療に精通した医師が,ヒトの生理的な拍動流存在下で展開・留置する実験を行い,体感を定性的に評価した.ステントグラフトの展開時に臨床で血流から手に伝達される力が実臨床での体感に合致する,臨床に即したこれまでにない性能と手技を評価可能な実験システムであると評価を受けた.開発の過程で,血管の摩擦は留置試験において重要な要因であることが判明し,血管の摩擦係数に合わせた血管モデルを本年度に開発するところまで達成できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
拍動循環シミュレータの開発において,患者CTデータを用いる際に生じた課題を克服した実験装置を開発するところまで達成でき,H28年に計画していた臨床医によるステントグラフト留置実験まで進むことができた.さらに,ステントグラフトを用いた治療に精通した医師による拍動循環シミュレータへのステントグラフトの留置実験において,臨床での体感に合致した実験システムであると評価を受け,また,臨床医による評価で判明した血管モデルとカテーテルの摩擦の違いについて,シリコーンモデルの摩擦係数を血管に合わせる方法を開発するところまで達成できた.H27度に計画した(1)大動脈瘤モデルを有する拍動流回路の開発,(2)デバイスの留置に伴う計測と解析評価,(3)大動脈瘤モデルの妥当性確認とモデル洗練化の3項目全てにおいて,研究代表者と研究分担者が綿密に研究経過報告会等を行い一体となって推進して全て計画通りに推進することができ,(1)と(3)の2項目についてはH28年度の計画の一部まで進めることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
し,弓部大動脈瘤治療において有効かつ安全なステントグラフトと治療法の迅速開発に活用できる評価試験システムとして発展させていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験計画を効率的に進めることができたため.
|
次年度使用額の使用計画 |
H28年度における研究を発展的に進めていくために活用していく.
|