本研究では再生型人工血管Biotubeの成長性について動物モデルを用いて調査した。先天性心疾患は新生児の約1%とその発生率は決して少なくはなく、重症度によっては早期の外科治療が必要となるケースがある。その中には人工血管や人工シート材料を使わざるを得ないケースもある。しかし、小児血管外科治療において、成長期前の患者に人工物を使用すると、成長に伴い生体血管または臓器とのサイズミスマッチが生じるため、成長段階に合わせて繰り返しの手術が必要となり、患者にとっての負担が大きい。一方で我々が提唱する生体内組織形成術(IBTA)を用いて作製する自己組織から形成される人工血管Biotubeは、生体適合性が高く、血管領域に移植すると数ヶ月内には生体に生着し、血管様構造へと組織再構築されることがこれまでの研究からわかっている。その後は体内で成長性の有することが期待されていたが、これまでに実際に検証されていなかった。そこで本研究では若齢ビーグル犬の頚動脈部にBiotubeを移植し、その後の経過を生体の成長とともに観察した。動物の成長は人と異なり短期間に急速に進み、短期間のうちに終了してしまうため、本研究では観察期間に重点をあてるために予め成犬ビーグルで作製した他家Biotuheを同種移殖したが、移植後1ヶ月程度で生体血管に生着した。経過観察として3ヶ月ごとの血管造影を行い、生体血管とBiotubeの口径を計測した。移植後3ヶ月までは生体血管が急速に成長していたのに対し、Biotubeの口径は変化に乏しかったが、その後は生体血管の口径拡大に追従するようにBiotubeの口径拡大が起こり、移植1年後にはほぼ口径差がなくなった。また、移植1年後に肉眼的観察を行うと、Biotubeの長さが最大で1.3倍に伸長していた。以上の結果から、Biotubeは成長する人工血管として小児医療への貢献が期待できる。
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