研究課題
本邦では、深刻な脳死ドナー不足のために、生体肺移植の占める役割が無視できない。しかしながら、実際には、血液型不適合やクロスマッチ陽性のために実現できない場合が多い。よって、他臓器移植にならい、血液型不適合やクロスマッチ陽性肺移植の実現が、本邦での喫緊の課題である。また、肺移植後の抗体関連型拒絶(AMR)が世界的に注目され始めたが、本年もガイドラインの一部が、国際心肺移植学会から公表された。そこで、本研究は、血液型不適合やクロスマッチ陽性肺移植の世界初の実現とAMRのさらなる理解を目指し、肺移植前後のHLA抗体の推移や、肺における血液型抗原と抗体反応、肺のAMRにつき、多角的に検討することを目的とする。本研究は、肺移植における「抗体」の意義を確認するとともに、「抗体」という観点から生体移植と脳死移植の違いを解き明かす鍵となる。まず、肺移植におけるHLA抗体、とくにDSA産生およびAMRという状況を、生体肺移植および脳死肺移植患者において、同一施設、同一基準で診断、治療し、経過を観察し、網羅的に解析していくという研究を本年も続けた。術前および術後3-6カ月毎、又は必要時に、HLA抗体のスクリーニングと各種バイオマーカーの測定を行った症例は、2017年3月末までで135例に上った。その内、17例がDSA陽性となったが、内訳は、生体肺移植3例(5%)、脳死肺移植14例(20%)であり、脳死肺移植が有意に多かった。また、生体肺移植におけるDSAの出現が予想外に低いことも判明した。続いて、造血幹細胞移植後の肺移植患者の摘出肺を用いて、ABO抗原の発現を免疫組織学的に確認したうえで、ABO不適合造血幹細胞移植において、正常肺と障害肺でABO抗原を用いたキメリズムの度合いを確認した。本結果に基づき、障害肺に対する肺再生への研究展開を行う方針とした。
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