研究実績の概要 |
癌組織は多様な性質を持った不均一な細胞集団から構成されている。起源の癌組織を再構築できるごくわずかな細胞群の存在が示唆され、癌幹細胞(cancer stem cell, CSC)と呼ばれている。癌幹細胞の性質として:1)自己を複製する能力に加え他の細胞に分化する能力を持つ;2) 細胞周期進行(細胞分裂速度)が遅い;3) 細胞周期の静止期に存在している;4) 腫瘍を形成する能力が高いことが挙げられている。癌幹細胞が分裂する際には自己と同じ性質を持つ細胞と、多様な癌細胞に分化する前駆細胞とに不均等に分裂する。前駆細胞は様々な性質の癌細胞に分化し、癌組織は癌幹細胞を中心としたヒエラルキーを形成していると想定されている。自己複製されたCSCは、微小環境(ニッチ)からの刺激を受けるまでは細胞周期の静止期に存在するため、増殖期にある細胞を標的とする抗癌剤や放射線に耐性を示すと考えられている。 また、CSCが1個でもあれば癌組織を再構成できることから、腫瘍の再発や転移の発生源と考えられており、癌幹細胞を消失させることなく癌組織を撲滅すること不可能である。 そこで、私たちはPDXによって濃縮され、かつ大きく数を増加させたCSCを用いて、CSCと周囲間質の相互関連を解析し、相互関連の責任因子を標的としてCSCを撲滅させる治療法を開発することを本研究の目的とした。 本年度は引き続き肺癌PDXの作成を行い、同時にin vitroで培養可能なPDX由来細胞株を樹立した。それらを用いて、肺癌、特に肺扁平上皮癌のCSCに重要な因子を同定することができた。
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