研究実績の概要 |
もやもや病は頭蓋内内頚動脈終末部の狭窄を主病変とし、狭窄の進行により脳梗塞や一過性脳虚血発作などの頭蓋内の虚血症状が引き起こされる。もやもや病の発症のメカニズムはいまだに明らかになっていない。もやもや病では明らかに頭蓋内に特異的に血管狭窄病変が生じており、病理学的には、内頚動脈終末部の肥厚した内膜の細胞には血管平滑筋細胞のマーカーが発現している。これらのことから、頭蓋内の血管平滑筋細胞の異常が病態に関与している可能性がある。血管内皮細胞は全身的に中胚葉から発生するが、血管平滑筋細胞は身体の部位により発生が異なることが知られており、特に頭頚部の血管平滑筋細胞は神経堤細胞を経て発生してくる。本研究ではもやもや病患者由来iPS細胞を用い、神経堤細胞へと分化誘導させた後に血管平滑筋細胞へと分化誘導することで、もやもや病特異的かつ発生学的にも頭頚部に特異的な血管平滑筋細胞を作製する。本研究では、健常人由来iPS細胞3株、もやもや病患者由来iPS細胞3株を用いて実験を行った。過去の報告に基づき、iPS細胞をLDN193189, bFGF, SB431542で8日間刺激し、神経堤細胞への分化誘導を行った。神経堤細胞のマーカーであるp75は約95%で陽性であった。また、免疫染色ではnestinがほぼ全ての細胞で陽性であり、神経堤細胞への分化誘導が高い効率で進んでいることが示された。それらの細胞に対して平滑筋細胞への分化誘導を行った。TGF-β1, PDGF-BBによる刺激を12日間行い、その後7日間10%牛血清を含んだDMEM培地で培養した。その後、α-SMA, カルポニン、SM-22の免疫染色を行ったところ、90%以上の細胞で陽性を示した。一方で、これらの細胞は増殖が不良であり、培地の変更なども行ったが、最終的に解析を行うに十分な細胞量が確保できなかった。
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