研究課題/領域番号 |
15K15521
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中里 信和 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80207753)
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研究分担者 |
藤川 真由 東北大学, 大学病院, 助教 (80722371)
岩崎 真樹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00420018)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん外科 / 心理社会的評価 / 生活の質 / 抑うつ / 不安 / 抗てんかん薬 |
研究実績の概要 |
てんかんの外科治療では、従来、発作の消失・軽減が quality of life(QOL)向上に直結する最大の因子と考えられてきた。しかし実際には、逆にQOLが低下する場合も少なからず存在する。本研究では、てんかん外科における術後QOLの向上を最大化させるべく、①自動解析を行う「てんかん外科予後予測プログラム」と、②術前の介入ニーズに個別に対応できる「患者教育プログラム」の2つのプログラムの開発を目的としている。 平成27年度は、「てんかん外科予後予測プログラム」の開発を行う前段階として、薬剤抵抗性てんかんの術前と術後に、患者の医学的基礎情報や医学的評価(脳波・画像・神経心理、精神神経、他)に加えて、自記式の心理社会的評価を行った。現在、集約されたデータをもとに統計解析を実施し、予後予測因子間の関連性や因果関係を算出している。予備的結果ながら、術後のQOLは必ずしも医学的因子によってのみ左右されるわけではなく、術前の患者の心理社会的因子に強く作用されていることが明らかになっている。具体的には、家族や周囲の理解が得られている環境下では残存発作の有無に関わらず患者のQOLは高い。一方で、手術に対しての過度の期待を有する症例においては、術後の発作消失にも関わらず満足度が低いという結果が示唆されている。 以上の結果より、術前の心理社会的評価と、カウンセリング、患者教育などの介入が、てんかん外科後の患者のQOLを向上させる大きな因子になると予測される。次年度はこの予備結果の正当性を統計学的に検証するとともに、本格的な「てんかん外科予後予測プログラム」の開発を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術前の医学的因子のみならず、心理社会的因子が術後のQOLを予測する重要な因子であること、および術前の患者教育やカウンセリングが術後のQOL向上に大きく寄与する可能性があること、という2つの予備的結果は、研究計画に沿ったものであり、研究が順調に伸展していると判断する。次年度は、てんかん外科を中心的に担ってきた研究分担者の岩崎が、他施設に転出となるため、研究代表者の施設内での外科手術症例数が若干減少することが予測される。これを補うために、研究分担者の岩崎はあらたな勤務先においての外科適応症例についても、本研究の症例に組み込む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、本格的な「てんかん外科予後予測プログラム」の開発を開始するとともに、前年度に得られた結果を基にして、術前の介入ニーズに個別に対応できる「てんかん外科患者教育プログラム」の開発にも平行して着手する。具体的には、専門家のコンサルテーションのもと、てんかん外科治療入院の流れを示したデジタルコンテンツや、オンライン自己学習ツール、自記式ワークシート、個別に組み合わせが自由自在なカリキュラムを制作する。また、前年の研究成果を、学会や専門家との情報交換を通して発表し、改良を重ねる。論文執筆も行う。患者家族データの収集・解析も前年度より継続する。 また研究分担者の岩崎が多施設に転出となるが、新しい施設においても、てんかん外科治療を実施する予定となっている。研究代表者の所属する施設での外科治療例と合わせての共同研究を計画しているので、研究実施についての支障はない。また別予算で準備したハイビジョンテレビ会議システムを用いて、密接な打合せが可能となる予定である。
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