研究課題
松果体実質性腫瘍は、pinealocyteに由来する稀な腫瘍である。未分化胎児性腫瘍である松果体芽腫は予後不良であり、中分化型松果体実質腫瘍は予後不良となる症例が混在するが、治療法は確立していない。松果体実質性腫瘍は、松果体部に発生する稀な腫瘍であるため、十分な標本が得られないこともあり、その発生・悪性化の分子基盤は未解明である。本研究では、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を用いて松果体実質性腫瘍の発生・悪性化の分子基盤の解析を行うことを目的とした。平成27年度は、小数標本でFFPE組織から腫瘍組織選択的に回収し、各試料を酵素消化で前処理を行い精製し、質量分析用試料として調整、LC-MS/MSを用いて精密質量を測定し、網羅的なタンパク質を同定する実験法を確立した。さらにゲノムワイド変異解析に適した高純度なDNA、mRNAを回収・精製を行った。平成28年度は、chromogranin Aがneurofilamentより予後因子として関連性がある可能性、ソマトスタチン受容体(Somatostatin receptor type 2(SSTR2))の発現亢進を認めることが明らかとなった。しかし、SSTR2スコアと松果体実質性腫瘍であるPineal parenchymal tumor of intermediate differentiation (PPTID)の臨床経過、他の神経系マーカー、悪性度との相関を見出すことはできなかった。そこで、抽出したDNA、mRNAライブラリーの増幅を行い、ゲノムワイド変異解析を行い、特にエピジェネティック制御、分化誘導に関わる転写因子、シグナル分子に注目した解析を進めている。これらの解析が加わると、松果体実質腫瘍におけるエピジェネティック転換、分化誘導へとスイッチする遺伝的なダイナミクスが同定できる見込みである。また、本研究結果より、SSTR2を標的とした診断、治療の可能性が示唆されたため、臨床応用に関しての挑戦を行う予定である。
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