研究課題
成人低悪性度グリオーマ関連ドライバー遺伝子変異を正常ヒト神経幹/前駆細胞で発現させてその機能を評価するため、正常ヒト神経幹/前駆細胞を作成する元になるヒトiPS細胞にTet-onシステムを用いた外来遺伝子誘導系を導入した。ヒトiPS細胞(409B2株)をSNLフィーダー細胞上で拡大培養した後、遺伝子導入用にフィーダーフリー培養システムへの馴化培養を実施した。フィーダーフリー化したセミコンフルエントのヒトiPS細胞409B2株に対して、Lipofectamine® 3000試薬(Thermo Fisher Scientific社)を用い、TET3G vector(Clontech社)を遺伝子導入し、抗生剤G418を用いたセレクションにてTET3G導入株をセレクションした。次に、クローニングしたTET3G導入株に、Lipofectamine® 3000試薬を用いてcontrol response plasmid (pTRE3G-Luc)を遺伝子導入し、Doxycycline添加/非添加の培養液に置換して24時間培養後、Luciferase活性を測定してTET3G導入株選定を実施した結果、候補クローン6株よりDoxycycline添加/非添加ウェルの発光量比が10倍以上あることが確認されたクローンが2株選択され、それらを拡大培養し凍結保存した。以上の結果から、Tet-onシステムを用いた外来遺伝子誘導が可能となるヒトiPS細胞株の樹立に成功したと判断される。
2: おおむね順調に進展している
正常ヒト神経幹/前駆細胞へ成人低悪性度グリオーマ関連ドライバー遺伝子変異を導入し、その機能を評価するための実験系の構築が初年度の目標であったが、Tet-onシステムで外来遺伝子の発現制御が可能なシステムを組み込んだヒトiPS細胞の樹立に成功した。このヒトiPS細胞を分化誘導させることで正常ヒト神経幹/前駆細胞を作成することが技術的に可能であり、正常ヒト神経幹/前駆細胞において成人低悪性度グリオーマ関連ドライバー遺伝子変異の機能を評価するためのプラットホームの構築は達成されたと判断する。具体的な遺伝子変異導入は現在進行中であり、全体の進捗としてはおおむね順調に進展していると判断する。
研究開始時点では、樹立済正常ヒト神経幹/前駆細胞にエレクトロポレーション等を用いて外来遺伝子を導入する手法を計画し、その実施を試みたが、効率が十分でなく、別アプローチとしてヒト神経幹/前駆細胞作製の元になるヒトiPS細胞に先行してTet-onシステムを導入し、Tet-onシステム導入iPS細胞を神経分化誘導させることで遺伝子導入ヒト神経幹/前駆細胞を作成する手法に変更した。その結果、目的とする遺伝子導入ヒトiPS細胞の作成に成功し、結果的にはより汎用性の高い実験系を構築することができたと判断する。次年度以降は、このシステムを利用して、発生段階および領域特異性の異なるヒト神経幹/前駆細胞を作成し、そこに主に低悪性度グリオーマ発生との関連性が報告されている融合遺伝子を導入し、グリオーマ発生に及ぼす機能を解析していきたいと考える。
物品費において予定より支出が少なく済み、次年度使用額が生じた。
研究に必要な細胞培養関連、遺伝子解析関連、動物実験関連の資材等の消耗品購入のための物品費、遠方の連携研究者との共同研究を円滑に実施するため会議に関わる国内旅費、国際学会での情報収集・成果発表のための国際旅費、および論文作成に関わるその他経費を計上した。これらは研究を円滑に実施し、かつ研究成果を世界に発信するために必要なものと考え、妥当な範囲内のものと考える。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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