研究課題
前年度に作製したTet-On 3G transactivator protein(Tet3G)発現vectorを導入したヒトiPS細胞(409B2株)に、gene of interest(GOI)として、2種類の低悪性度グリオーマ関連ドライバー変異遺伝子(IDH1-R132H変異型、BRAF-KIAA1549融合遺伝子)を選択し、発現ベクター作製を実施した。Lower grade astrocytoma(LGA)およびpilocytic astrocytoma(PA)腫瘍組織からRNAを抽出した後、cDNAを合成し、IDH1-R132H変異型(LGA)及びBRAF-KIAA1549融合遺伝子(PA)を各々クローニングし、pTRE3G-BI-ZsGreenベクターへ組み込んだ。低悪性度グリオーマ関連ドライバー遺伝子変異がヒトiPS細胞由来神経前駆細胞のエピジェネティクスに及ぼす影響を評価するため、遺伝子導入前段階のヒトiPS細胞由来神経前駆細胞のDNAメチル化状態を、マイクロアレイ(illumina社製)を用いて評価し、神経組織由来正常ヒト神経幹/前駆細胞のDNAメチル化状態との比較検討を実施した。遺伝子導入されたヒトiPS細胞由来神経前駆細胞の造腫瘍能を評価するためのin vivo実験系の構築として、免疫不全マウス(NOGマウス)の線条体への定位的細胞移植手法と移植細胞数の検討を実施した。また、マウス脳組織内で移植されたヒト細胞を同定するため、ヒト細胞を選択的に認識する抗体(STEM121抗体、抗ヒト核抗体)を用いた免疫組織学的手法の有用性を評価した。
3: やや遅れている
2年目は、正常ヒト神経幹/前駆細胞へ成人低悪性度グリオーマ関連ドライバー変異遺伝子を導入し、その機能をin vitroおよびin vivoで評価する計画としていた。細胞移植法等やその他の周辺in vivo評価技術の開発については先行して確立することができた。しかし、DNAメチル化解析等のin vitro解析により、Tet3Gを導入したヒトiPS細胞株409B2が今後の解析に不適な株であることが判明したために、細胞を選定し直して遺伝子導入株の再作製を行ったために、Tet-On 3G誘導発現系の構築は十分には実施されなかった。ただ既に遺伝子導入ヒトiPS細胞株の作製を終了して解析準備を整えることができている上、in vivo評価系の構築は終了していることから、総合的には当初の計画にやや遅れが見られる程度である。正常ヒト神経幹/前駆細胞において成人低悪性度グリオーマ関連ドライバー遺伝子変異の機能を評価するためのプラットホームの構築は概ね達成されたと判断され、研究進捗としては当初目標よりはやや遅れているが最終年度で十分に回復が可能なレベルにあると判断する。
最終年度は、今年度作製した低悪性度グリオーマ関連ドライバー変異遺伝子ベクターをヒトiPS細胞由来神経前駆細胞に導入して発現させ、in vitroにおける機能解析、NOGマウス脳内移植系を用いてin vivoでの腫瘍形成能を評価し、正常ヒトiPS細胞由来神経前駆細胞からのグリオーマ発生に関わる機能を解析すると同時に、導入されたドライバー変異遺伝子がヒトiPS細胞由来神経前駆細胞のエピジェネティクスに及ぼす機能を解析していきたいと考える。
物品費において予定より支出が少なく済み、次年度使用額が生じた。
研究に必要な細胞培養関連、遺伝子解析関連、動物実験関連の資材等の消耗品購入のための物品費、遠方の連携研究者との共同研究を円滑に実施するため会議に関わる国内旅費、国際学会での情報収集・成果発表のための国際旅費、および論文作成に関わるその他経費を計上した。これらは研究を円滑に実施し、かつ研究成果を世界に発信するために必要なものと考え、妥当な範囲内のものと考える。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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