研究課題
変形性関節症の中心的な症状は関節の痛みであり、関節の痛みは画像上の関節の変形の程度と統計学的に相関することは知られているが、一方で個々の事例を見ると、関節の変形が著しくとも痛みの少ない症例も多い。変形性関節症の分子メカニズムについては、2005年以降マウスモデルを用いた研究が盛んとなり、これまで多くの報告がなされてきた。しかしながら、マウスモデルでの評価は組織学的なものがほとんどであり、マウスがどれほど痛がっているかについては誘発試験などがわずかに行われてきただけであった。本研究ではモーションキャプチャーの手法を用いた動作解析をマウスに行い、変形性関節症モデルマウスの関節の痛みがどのような歩行の異常をもたらすかを検討した。変形性関節症モデル手術として片膝の内側半月板と内側側副靱帯の切除を行った野生型オスマウスを10匹用意し、術後半年飼育して十分に変形性関節症が進行するのを待った。その後、トレッドミル歩行に馴化させたのち、さまざまな速度でマウスを歩行させ、3台の高速度カメラで記録し、骨盤、大転子、足関節、足部にとりつけたマーカーの動きを計算した。膝関節については皮膚の動きによるノイズを避けるため、大腿骨と脛骨の長さから計算して位置を割り出した。それぞれのマーカーの高さ、各関節の角度がどのように推移するかを調べたところ、変形性関節症マウスではSham手術マウスと比べて、接地時の膝の踏み込む角度と、けりだす角度が有意に低下することが分かった。これらの変化が痛みによるものであるかを検証するため、マウスに鎮痛剤セレコキシブを内服させてから再び計測したところ、これらの角度の変化は解消された。これらの検証より、変形性関節症による痛みが、踏み込みとけりだしにおける膝関節の屈曲を低下させることが分かった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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http://www.u-tokyo-ortho.jp/