研究課題
骨の恒常性は、骨形成を担う骨芽細胞、骨吸収を担う破骨細胞、その両細胞を制御する骨細胞の働きによって維持されている。骨細胞特異的IA型PI3Kノックアウトマウスの解析から、骨細胞による新たな骨芽細胞の制御メカニズムの存在が示唆されたため、この新たなメカニズムを解明することを本研究の目的とする。骨細胞特異的ノックアウトマウス作成にあたってはDMP-1遺伝子のプロモーター制御下でCreを発現するマウスを用いたが、DMP-1は骨細胞だけではなく、骨芽細胞分化の後期でも発現する可能性があり、骨細胞特異的IA型PI3Kノックアウトマウスにおける骨芽細胞形成不全とそれに伴う骨形成異常は、分化後期の骨芽細胞でPI3K遺伝子が欠損してしまった可能性を否定する必要がある。そのため、in vitroの骨芽細胞分化系で培養したノックアウトマウス由来の骨芽細胞における遺伝子発現について網羅的に解析したところ、骨芽細胞の分化や機能に重要な遺伝子や骨芽細胞による石灰化に異常は認められなかった。この結果は、骨細胞特異的IA型PI3Kノックアウトマウスにおける骨形成異常が、骨芽細胞の細胞自律的な異常ではなく、骨細胞による骨芽細胞分化の制御に異常をきたしていることを強く示している。骨細胞による骨芽細胞制御メカニズムの一つにGap junctionによる制御が知られている。骨細胞特異的IA型PI3KノックアウトマウスにおけるGap junctionの形成を評価するため、骨細胞特異的IA型PI3KノックアウトマウスとEGFPを発現するレポーターマウスとを交配したマウスを作成、共焦点顕微鏡による骨細胞―骨芽細胞間のGap junctionの形態学的解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
レポーター遺伝子を組み込んだ骨細胞特異的ノックアウトマウスの作成も終了し、Gap junctionの形成に関する評価も予定通り行われている。今後は、サンプル数を増やすことで最終的な結論を導く。分泌因子を介した骨細胞による骨芽細胞の制御に関するメカニズムについては、当初の解析予定分子が機能的に意義のある分子ではないことを明らかにし、かつ網羅的な遺伝子発現解析から新たな候補遺伝子の探索に成功している。
当初の予定通りに研究を進めていく。今後、さらにノックアウトマウスの解析数が増えることで、より強固な証拠が期待されるほか、幅広い解析手段の選択につながることから、現状よりも進行を早めてノックアウトマウスを用いた解析を進める。
当初の予定よりノックアウトマウスの作成に時間がかかったため、その分マウス管理維持費が少なかった。その分次年度は飼育数が増えることが予想されるため、繰り越し分を充当する。また、それに伴ってGap junctionに関する解析開始が遅れたため、今年度予定していた解析が若干後ろにずれることとなったため、Gap junction解析に要する研究費を繰り越すに至った。
繰り越し分は、当初の予定通りマウスの飼育管理費並びにGap junctionの解析費用に充てる。
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PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0141650
10.1371/journal.pone.0141650
Biochem Biophys Res Commun
巻: 463 ページ: 1284-1290
10.1016/j.bbrc.2015.06.105