研究課題
骨の恒常性は、骨形成を担う骨芽細胞、骨吸収を担う破骨細胞、その両細胞を制御する骨細胞の働きによって維持されている。これまで、骨細胞による骨芽細胞の制御メカニズムとして、骨細胞―骨芽細胞間のGap junctionを介する制御と骨細胞が産生するWnt経路の制御分子による骨芽細胞制御が報告されてきた。申請者が作成した骨細胞特異的IA型PI3Kノックアウトマウスでは、骨芽細胞数が劇的に減少するため骨形成が著しく障害され、重度の骨粗鬆症を発症することが判明している。本年度は、ノックアウトマウスにおける骨細胞―骨芽細胞間のGap junctionについて詳細な解析を行うため、骨細胞特異的IA型PI3KノックアウトマウスとCreリコンビナーゼが発現する細胞でEGFPを発現するCAG-CAT-EGFPマウスを交配したマウスを作成、骨細胞―骨芽細胞間のGap junctionの形態学的解析を実施した。その結果、野生型マウスと比較して骨細胞特異的PI3KノックアウトマウスのGap junctionに形態学的な異常は認められず、このノックアウトマウスにおける骨芽細胞分化の抑制はGap junctionを介した制御ではないことが示唆された。この結果から、骨細胞が産生する何らかの液性因子の発現変化が骨芽細胞分化を制御する可能性が考えられたため、ノックアウトマウスの骨組織からRNAを抽出し、RNA-seq解析を実施した。野生型マウスならびにノックアウトマウス間で既知の液性因子の発現について比較解析を行ったところ、両者間で優位に発現が変動する35遺伝子の抽出に成功した。この35遺伝子のcDNAをクローニングし、それぞれを骨芽細胞前駆細胞に過剰発現させ、骨芽細胞分化に与える影響について解析を行ったところ、4因子が骨芽細胞の分化を抑制もしくは促進することを明らかにした。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (4件)
Sci Rep
巻: - ページ: -
10.1038/srep41710
Development
巻: 144 ページ: 313-320
10.1242/dev.135798
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 133 ページ: 7840-7845
10.1073/pnas.1522054113