研究課題
軟骨細胞が軟骨基質変性に及ぼす役割を知るため、Col112a-YFPマウスを用いてDMM手術による軟骨変性誘後を観察した結果、関節軟骨の変性の進行とともに、Col10その他のマーカーを発現する肥大軟骨細胞が軟骨中間層・深層のみならず、一部はtidemark下にも出現することが認められた。lineage tracing の結果、これらの肥大軟骨細胞は、tidemark下に出現した細胞も含めて、軟骨変性が生じる前の中間層~深層の軟骨細胞に由来することが確認された。肥大軟骨細胞がtidemark下に移動するメカニズムは不明であるが、単なるtidemarkの上昇のみならず、軟骨下骨からの血管侵入と石灰化軟骨基質分解とリンクしている可能性が考えられた。このような軟骨細胞肥大化を制御する分子候補の1つとして、すでに発生時の成長軟骨ではsalt-inducible kinase 3(sik3)が関与していることが知られている。そこで本分子が関節軟骨における軟骨細胞肥大にも関与していることを明らかにするために、タモキシフェン誘導性の関節軟骨特異的sik3欠失マウスを作成し、DMM手術を行って解析した結果、sik3欠損マウスでは関節軟骨細胞の肥大化が認められず、また肥大軟骨細胞のtidemark下への遊走も見られなかった。これらのことからsik3経路のノックダウンまたは抑制が、関節軟骨細胞の肥大化を抑制し、ひいては軟骨変性阻止の治療ターゲットとなりうることが明らかとなった。なお、sik3を阻害する候補物質の一つがin vivoモデルでの変形性関節症進行を抑制できることは既に報告済みである。
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Nature Commun
巻: 7 ページ: 10959
10.1038/ncomms10959