チタン繊維に圧縮荷重とせん断荷重を同時に負荷させることでチタンペーパーを試作した。アスペクト比(繊維の直径と長さの比)25のチタンペーパーについて、1.細胞培養実験、2.異所性骨再生試験、3.骨欠損修復実験、4.骨折治癒実験を行い、チタンペーパーを用いた骨疾患治療の有用性に関する検討を行った。1では、骨芽細胞の接着性が良好であることを示した。2では、BMPを付加して筋肉内に埋入すると異所性に骨を形成した。3では、優れた骨誘導能により骨欠損を修復することを明らかにした。4では、骨折治療プレートとしてのモデルケースを示した。以上の研究から、チタンペーパーを骨再生医療や骨折治療材料に用いると、チタンの織り成す3次元構造と機械的特性により優れた骨形成・修復能を示すため、骨疾患治療に極めて有用であることが判明した。本研究で検証したチタンペーパーの用途は、現在の整形外科治療における重要な課題を解決する。骨再生に対する足場材を用いた骨再生研究は新規性が高く、再生医療のイノベーションを生み出す可能性がある。骨再生医療は現在一般臨床に普及していないが、チタンペーパーの高い有効性が認められれば、その普及に貢献する。粉砕骨折や骨欠損修復への応用は実現性が高い。特に小骨片の母床骨への固定や骨移植部のカバーなどで有効性が高い。従来から臨床に用いられているチタンを素材としており、早期に製品化して臨床への導入が期待できる。これらの結果をまとめて2017年12月に「骨組織修復のためのチタンファイバープレート(Titanium fiber plates for bone tissue repair)」というタイトルでAdvanced Materials(Impact factor 19.791)に論文発表した。
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