研究課題/領域番号 |
15K15548
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鬼頭 浩史 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (40291174)
|
研究分担者 |
杉浦 洋 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40750477)
松下 雅樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60721115)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 進行性骨化性線維異形成症 / ALK2 / Id1 / 薬効スクリーニング / ドラッグ・リポジショニング / 異所性骨化 |
研究実績の概要 |
進行性骨化性線維異形成症(fibrodysplasia ossificans progressiva : FOP)は骨形成タンパク(bone morphogenetic protein : BMP)の受容体であるALK2の活性型変異により発症し、全身の軟部組織に進行性の異所性骨化をきたす難病である。異所性骨化は外傷や手術侵襲などで急激に増悪するため、外科的治療の適応はなく、むしろ禁忌とされている。また、進行性の骨化を抑制する有効な内科的治療法もない。我々は変異型ALK2強制発現ベクターおよびBMPシグナルの標的遺伝子であるId1プロモーターのレポーターベクターをマウス筋芽細胞株C2C12に導入して、ルシフェラーゼ活性にて薬効スクリーニングする系を確立した。この系に1186種類の米国食品医薬品局既認可化合物のライブラリーを添加し、ルシフェラーゼ活性を減弱させる既存薬を網羅的に検索した。ファーストスクリーニングにてカットオフ値をvehcle比0.3以下とし、抗がん剤や抗生剤、免疫抑制剤など長期投与が困難な薬剤を除外してセカンドスクリーニングを行った。細胞増殖能の低下に基づくルシフェラーゼ活性の低下をルールアウトするため、MTSアッセイにより細胞増殖能も併せて評価した。セカンドスクリーニングにてカットオフ値0.2以下にルシフェラーゼ活性を下げた15種類(抗うつ薬4種類、抗ヒスタミン薬3種類、抗精神病薬3種類、高血圧薬、抗リウマチ薬、高脂血症薬、骨粗鬆症薬、セロトニン作動薬それぞれ1種類)の候補薬剤を絞り込んだ。現在、サードスクリーニングにてこれら薬剤の濃度度依存性の薬効を検討中である。本研究ではドラッグ・リポジショニング戦略に基づいた既存薬の網羅的スクリーニングにより、Id1プロモーター活性を抑制してFOPの異所性骨化を抑制する薬剤を同定することを目的とする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までにC2C12細胞に変異型ALK2ベクター、レニーラ・ルシフェラーゼベクターおよびId1プロモータールシフェラーゼベクターを遺伝子導入したスクリーニング系を確立し、セカンドスクリーニングまで実施して候補薬を絞り込んだ。しかし、それら薬剤に対しサードスクリーニングで濃度依存性の薬効を検討したところ、ルシフェラーゼ活性では充分な濃度依存性を証明することができなかった。そこで、今年度にセカンドスクリーニングを再度施行し、新たな候補薬15種類を同定した。スクリーニングの再検を行ったことにより、当初の予定よりやや遅れていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに同定した15種類の薬剤に対し、サードスクリーニングにて濃度依存性の薬効を検討する。濃度依存性の評価はルシフェラーゼ活性だけでなく、Id1のmRNAの発現をRT-PCR法で、Id1タンパクの発現をWestern blotting法にて評価する。また、Id1の標的遺伝子である各種骨形成マーカー(アルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、オステオポンチンなど)のmRNAおよびタンパク発現の検討も加える。さらに、BMPシグナル下流の細胞内SMAD1/5/8のリン酸化抑制作用に関しても評価する。これら実験により、in vitroでの有効性を示す薬剤をさらに絞り込み(理想的には1-3種類)、動物モデル(FOPモデル動物あるいはcrude BMPの筋肉内移植による異所性骨化モデル)に投与して、in vivoにおける骨形成抑制作用を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は28年度内にサードスクリーニングを実施する予定であったが、薬剤の絞り込みが年度内に完了しなかった。したがって、サードスクリーニングで薬剤濃度依存性を検討するためのRT-PCR、Western blotting、ELISAの実施が予定通りに進まなかったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
15種類の薬剤に対し、Id1のmRNA発現をRT-PCR法で、タンパク発現をWestern blotting法で評価する。また、各種骨形成マーカー(アルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、オステオポンチンなど)のmRNAおよびタンパク発現の検討も加える。さらに、細胞内Smad1/5/8のリン酸化抑制作用を検討する。
|