研究課題/領域番号 |
15K15554
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
若林 健二郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20418867)
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研究分担者 |
和田 郁雄 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70182970)
佐久間 英輔 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90295585)
村上 里奈 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10535818)
青山 公紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10597818)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 育児障害 / イオンチャンネル / マウス / 脳 |
研究実績の概要 |
酸感受性イオンチャンネル1a; Acid-sensing ion channels 1a (ASIC1a) のノックアウトマウスの雌に高度の育児障害と放置虐待が発生する事を発見し、育児障害の程度を把握するために、各種の行動生理学的実験を行っている。具体的には、日齢をマッチしたASIC1aノックアウトマウスのwild-type (+/+), mutant homozygote (-/-) , heterozygote (+/-)の雌のマウスが妊娠後期になったら一匹ずつ別個のケージへ移動して飼育し、行動生理学検査は出産後厳密に14から27時間の間に開始している。行動生理学検査は飼育舎が消灯してから2時間後に開始し22: 00 から 23: 30に限定して行う。検査中はテスト室内を調光装置に接続した赤色のライトで照明し、照度計(T-10 digital illuminance meter, Konica Minolta, Tokyo, Japan) にて測定、ケージ内が全て0.28-0.35 lux.になるように調節している。巣作りの材料として与えた3個の滅菌したコットン塊 はケージの中央に集めて、3匹の実験用の仔は巣のある場所から離れた位置にある3箇所のコーナーに静置する。観察用ケージの中に分離して安静にさせておいた親マウスを投入して行動生理学的検査を開始する。観察時間は30分とし、暗視条件で撮影可能な高感度デジタルカメラ(WAT-502B; Watec Co, Yamagata, Japan) に接続したHDビデオ記録装置(DMR-E500H-S, Panasonic, Japan)を用いて、ビデオ記録する。実験観察は出産後3日間に渡って行い統計的に検討している。なお、結果の一部については、2016年10月の日本整形外科学会基礎学術集会(福岡)にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、育児障害の出産仔に対する影響を調査する為に、仔マウスの体重測定も継続して行っている。現在までに、各グループ仔マウス約400匹について検査済だが、Mann & Whitney U testでP< 0.01の有意差をもって、ホモのノックアウトマウスの仔マウスの体重がワイルドより軽かった。この事は、育児障害の影響を示唆している。一方、親マウスの脳内の障害のメカニズムを調査するために、In Situ Hybridizationを用いてドーパミントランスポーター(DAT)の探索も行っている。実際には、RNA プローブをDATのnucleotides 865-1838 (DDBJ /EMBL /Gen Bank access number AF109398)に対して作成し、[35S] UTP (NEG-039H; Perkin Elmer, Yokohama, Japan)でラベルする。マウス脳を麻酔下に無痛状態で摘出しこれをドライアイスのパウダーで急速凍結する。このマウス全脳の凍結切片をクライオスタット(CM1850; Leica Microsystems; Wetzlar, Germany)を用いて10ミクロン厚にて連続切片として作成し、これに対して先程のRNA プローブを用いてIn Situ Hybridizationを行う。反応終了後プレパラート上の反応産物の局在を確認するためBio Max XAR films (XAR-2 165 1678; Kodak, New York, USA)でFilm auto radiographyを7日間行い現像して結果を確認した。結果として、ノックアウトマウスの場合にDATの遺伝子レベルでの発現低下をventral tegmental area(VTA)の部位にワイルドと比較して特異的に認めている。
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今後の研究の推進方策 |
ドーパミントランスポーター(DAT)の蛋白発言についての探索を最後に施行するため、Western Blot法を用いた検査を加える。実際には、マウス脳を麻酔下に無痛状態で摘出し、嗅球と小脳を除去したマウスの大脳に対して機械的にホモジナイズする、遠心分離処理を加えて可溶性の抽出タンパクを得る。これに対してSDS/PAGE法に準じて、ミニリアルスラブ(BE-220; Bio-Craft, Tokyo)とリアルパワー(BP-3; Bio-Craft, Tokyo, Japan)を使用しポリアクリルアミドゲル中で電気泳動する。ゲル中の分離蛋白をImmobilon-Pポリビニルメンブレン (Millipore; Massachusetts, USA)にPower Station 1000VC (AE-8450; ATTO, Tokyo, Japan)とTransblot SD Cell (Bio-Rad; Hercules, USA)を用いてセミドライブロットしてトランスファーする。一次抗体はDATモノクローナル抗体(MAB 369; Chemicon, Millipore; Massachusetts, USA )、二次抗体はAnti-Rat IgG HRP (sc-2006; Sigma-Aldrich, St. Louis, USA) とAnti Mouse IgG HRP (W402B; Promega, Wisconsin, USA) を使用する。これにECL発光反応をかけ Amersham Hyper Film TM ECL (Size 18 X 24 cm; GE Health Care, Fairfield, USA)を用いて反応を検出、現像して結果を得る。予備実験では、DATタンパクの産生低下がノックアウトの場合にワイルドと比較し確認された。今後さらに検討をしていく。
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