進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva: FOP)は、骨格筋や腱、靭帯等の軟組織で軟骨を介した異所性骨組織の形成(異所性骨化)が起こる遺伝性疾患である。FOPの責任遺伝子として、2006年にBMP受容体をコードするALK2/ACVR1が同定された。FOP症例では細胞内領域にアミノ酸置換が生じ下流の細胞内シグナルが活性化される。我々は、ヒトFOPの新しい病態モデルを確立する目的で、マウスES細胞にFOPの変異を導入したALK2遺伝子を導入し、テトラサイクリン誘導体であるドキシサイクリン依存性にALK2の遺伝子発現を誘導できる細胞株を樹立した。本ES細胞からマウスを樹立する目的で、細胞のカリオタイプを解析した。その結果、染色体に由来不明位断片の不可や、染色体の重複、転座が認められ、このES細胞株から個体を作製することは困難と判断された。そこで、ES細胞の軟骨細胞への分化能をin vitroで検討した。FOPの変異を有したES細胞は、リガンドとなるTGF-bファミリーの刺激によって、軟骨の分化マーカーであるII型コラーゲン遺伝子の発現が増加した。よって、我々が樹立したALK2を発現するES細胞は、FOPの新しいin vitro病態モデルとして応用が可能であり、FOPの治療薬を開発する上で有用なツールとなることが期待される。
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