研究課題/領域番号 |
15K15562
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 浩二 東北大学, 大学病院, 准教授 (10359515)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ARDS / microparticles / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、東北大学病院集中治療部及び救命救急センターに入院した敗血症患者および非敗血症患者のEMP測定を行なった。前年度の報告通り、EMPsは非敗血症に比較し敗血症・敗血症性ショックで優位に高かった。またARDS発症群ではEMPs数は非ARDS群と変わらなかったが、ACE陽性EMPs数、EMPsにおけるACE陽性率が有意に上昇しており、ACE陽性EMPsが急性肺傷害における肺血管内皮傷害を反映していることが示唆された。 また、本年度は肺毛細血管内皮細胞、及び、皮膚微小血管内皮細胞を用いて、肺毛細血管内皮細胞の細胞膜のACE発現やMPsの放出の違いについて検討した。肺毛細血管内皮細胞では細胞膜ACE抗原の発現が高く、またACE陽性EMPsの放出も多かった。さらに炎症刺激を加えると、細胞膜上のACE発現が低下するのとは対象的に、ACE陽性EMPsの放出が増加し、炎症刺激により細胞膜上から剥がれ落ちることが示唆された。また炎症刺激を加えることで肺毛細血管内皮細胞から放出されるEMPのACE発現率が増加することが観察されたが、これは肺以外の内皮細胞では見られず、肺毛細血管内皮細胞に特徴的な事象であると考えられる。 C57BL/6マウスに回盲結紮穿刺(cecal-ligation and perforation)を行い、indirect-ARDSモデル、LPS気管内投与によりdirect-ARDSモデルを作製した。ARDSモデルマウスにおいて、ACE陽性EMPsの増加及びEMPsのACE陽性率の上昇を確認した。また急性肺傷害モデルの肺乾湿重量比とEMPのACE陽性率との間に強い相関が見られ、ACE陽性率の上昇は、急性肺傷害の血管透過性亢進との関係が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性肺傷害モデルの確立がスムーズに進んだこと。当実験室で保管していたマウス内皮細胞を用いて、マウス血清マイクロパーティクルの内皮特異抗原の測定に必要な抗体量を決定できたことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も引き続きARDS症例のEMPs測定を行う。 また、ARDSマウスモデルの肺組織にACE抗体を用いて免疫染色を行い、急性肺傷害時にACEが脱落し、これがACE陽性EMPsとして検出されることを証明する。 EMPs、ACE陽性EMPsの機能解析も併せて行う。肺毛細血管内皮細胞の培養上清から、超遠心によりEMPを豊富に含む溶液を抽出し、これらが炎症性細胞に与える影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度以降に免疫染色、マイクロパーティクルの機能解析を行う予定であり、抗体含め消耗品に経費がかかると予想されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
急性肺傷害モデルマウスにおけるACE陽性EMPsが肺由来であることを検証する為に、マウス肺をACE抗体で免疫染色し脱落を証明する。現在EMP測定に用いている抗体は、フローサイトメトリーを前提としており、免疫染色用の抗体を追加購入する必要がある。 また、EMPsの機能解析のために肺毛細血管内皮細胞を購入しEMPsを回収する必要がり、その経費も必要になる。
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