研究課題/領域番号 |
15K15568
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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研究分担者 |
石田 高志 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (60531952)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 周術期 / がん転移 / がん再発 / circulating tumor DNA / 麻酔法 |
研究実績の概要 |
手術後のがん転移・再発:近年、麻酔法により、がんの再発率が大きく異なるという研究(後ろ向き)が麻酔科医に衝撃を与えた(Biki et al., Anesthesiology, 2008)。しかし、動物実験ではオピオイドが明らかにがんの増大を促進し(Gupta et al., Cancer Res, 2002)、臨床においては手術を契機に残存がんが増大・転移したとの報告は多く(Gottschalk et al., Anesth Analg, 2010)、これまでも、がん診療においては、周術期が残存がんの再発・転移を最も促進する期間と考えられてきた (Coffey et al. Lancet Oncol, 2003)。最近、digital PCR装置により、末梢血中に出現するがん細胞DNA(circulating tumor DNA: ctDNA)を検査し、原発巣のがん細胞数、悪性度、治療効果、転移のリスクなどを予測できるようになった。そこで本研究の目的は、周術期のctDNAとサイトカイン・心房性利尿ペプチドなどのバイオマーカーを計測し、麻酔・周術期管理が、術後のがん再発・転移に及ぼす影響を検討することである。
平成27年度は、悪性黒色腫を対象として、BRAF遺伝子変異(BRAFV600E)が周術期に出現するかどうかを、QX200 droplet digital PCRによって確定することを目的とした。倫理委員会および遺伝子解析倫理委員会の承認を得た後、患者のエンロールを行ったが、術前よりBRAF遺伝子変異(BRAFV600E)を認めた患者はおらず、BRAF遺伝子変異(BRAFV600E)がない患者が周術期に変異を出現するか確認中したが、目下のところ出現はしていない。今後、さらに症例を増やして検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
悪性黒色腫を対象として、BRAF遺伝子変異(BRAFV600E)が周術期に出現するかどうかを、QX200 droplet digital PCRによって検討中であるが、術前よりBRAF遺伝子変異(BRAFV600E)を認めた患者はおらず、BRAF遺伝子変異(BRAFV600E)がない患者が周術期に変異を出現するか確認中したが、目下のところ出現はしていない。
そこで、肺がん患者におけるEGFRT790MとEGFRL858Rを有する患者を対象とした研究(平成28年度予定)を前倒しして行おうと試みたが、患者数が目的に達していない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)BRAF遺伝子変異(BRAFV600E)を有する悪性黒色腫を対象として患者のenrollを継続していく。
(2)平成28年度には胸腔鏡手術が予定された非小細胞肺がん患者で、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異であるEGFRT790MとEGFRL858Rを有する患者を対象として、悪性黒色種患者と同様に周術期のctDNA測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ctDNA測定を行うための悪性黒色腫患者数が少なく、また肺がん手術患者が診療科の問題で減少したため、結果として患者のenrollが少なくなり、検査経費が余剰となった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度には胸腔鏡下での肺がん手術が増えることが予想され、皮膚科との連携を強め、悪性黒色腫患者のenrollも増えることが予想されるため、予定数以上の患者でのctDNA測定を行い、経費を消費する予定である。
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