研究実績の概要 |
手術後のがん転移、再発が、麻酔の方法により異なるとの報告がなされた(Anesthesiology, 2008)が、その詳細な機序は不明なままである。動物実験においては、オピオイドががん腫瘍を増大するとの報告は多く、臨床においても周術期にがんの転移が促進されるとの報告が散見される。最近、digital PCR装置により、末梢血中に出現するがん細胞DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)が検索できるようになった。そこでこのcDNA量を検討することで、原発巣のがん細胞数や悪性度を評価できるようになった。そこで本研究では、周術期において、このctDNAが検出されるか、あるいはそのDNA量の増大が見られるかを検討するのを主要測定項目とし、副次測定項目として、麻酔方法と各種サイトカインを検討した。
H27年度において悪性黒色腫を対象としてBRAF遺伝子変異が出現するかをQX200 droplet digital PCRで測定したが、術前より本遺伝子変異を認めた患者がいないため、対象を肺腫瘍に拡大して計測を行った。しかし肺腫瘍患者においても、周術期にctDNAが新たに出現した患者はなく、本研究では周術期にはctDNAの検出が難しいことが判明した。今後は、ctDNAを認める末期がん患者を対象に、緩和医療においてオピオイド等の鎮痛治療薬の投与による変化を検討したい。
|