急性骨髄性白血病などの難治性を示すがんは、その存在が推測されている「がん幹細胞」によって治療困難性を高めるという仮説がある。抗がん剤は細胞周期の分裂期やDNA合成期に作用し細胞死を誘導する。しかし「がん幹細胞」はこうした細胞周期から離れ休眠状態の静止期に留まるため、抗がん剤が作用せず、がんの再発の素因となりその難治性を高めていることが推察されている。 そこで本研究は一部のがん細胞が汎用されている吸入麻酔薬セボフルランの暴露により一時的に細胞周期を早めることに着目し、細胞周期から外れ休眠状態となった難治性のがんに対して、吸入麻酔薬セボフルランによる細胞周期の活性化を促し抗がん剤の治療効率を高めることができるかどうかを検討する挑戦的課題である。 2018年度のこれまでに研究代表者はセボフルラン暴露を受けた一部のヒトがん細胞株が吸入麻酔薬暴露の細胞増殖能を有意に高めることを見出した。さらにこれらの増殖が細胞周期の活性化によって生じたものかどうかを確認するためにBrdU取り込み後の免疫染色を行い細胞周期内のDNA合成期が増加することを確認した。またこうした吸入麻酔薬暴露後の増殖能の亢進は、免疫不全マウスの皮下においても再現することを同定した。そこでこのような現象が他のがん細胞株にも生じるかどうかの検討を進め、複数のがん細胞株で同様の結果を得られたことから、さらに抗がん剤の種類を加え検討を進めている。上記の成果の一部を国内および国外でポスター発表した。
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