研究課題
Wnt蛋白は中枢神経系の発達における様々な段階で重要な役割を果たしている。Wnt蛋白が活性化する情報伝達系には、Wnt/βカテニン経路とβカテニン非依存性経路(Wnt/Ca2+経路、平面細胞極性経路)があるが、Wnt/βカテニン経路の解明が最も進んでいる。神経障害性疼痛の成立においてグリア細胞においてWnt/βカテニン経路が活性化すること、Wnt/βカテニン経路の抑制によって神経障害性疼痛の成立が抑制されることが報告された。一方、幼少期における全身麻酔薬投与の副作用として注目されている神経毒性には、神経発生過程に対する薬物の影響が関与する可能性があると考えられているが、詳細な機序は不明である。神経発生に重要な役割を果たすWnt/βカテニン経路やグリア細胞が全身麻酔薬の神経毒性に関与する可能性については、ほとんど注目されていない。本研究ではこれまでに、静脈麻酔薬であるミダゾラムがアストロサイトにおいて低酸素により誘導されるエリスロポイエチンの発現が低下すること、この現象にはミダゾラムによる低酸素誘導性因子の核内移行の抑制が関与していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではこれまでに、静脈麻酔薬であるミダゾラムがアストロサイトにおいて低酸素により誘導されるエリスロポイエチンの発現が低下することを明らかにした。
グリア細胞における情報伝達機構に対する麻酔薬の作用を生化学的方法や免疫組織学的方法を用いて解明する予定である。
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European Journal of Pharmacology
巻: 761 ページ: 189-198
10.1016/j.ejphar.2015.05.024