プロポフォールは脂肪酸酸化を抑制しミトコンドリア機能不全を起こす可能性があり、本研究ではプロポフォール注入症候群の発症機序となる可能性について検討した。また同時にカルニチン投与が脂肪酸代謝を改善し、ミトコンドリア機能の保持に関与するかも検討した。 飢餓ラットを用いた動物実験ではプロポフォールは飢餓時のエネルギー基質として重要な脂肪酸利用が抑制され糖・アミノ酸に依存していたが、カルニチン投与では脂肪酸利用が改善されていた。このことは飢餓時や糖・アミノ酸利用が障害される重症患者においてプロポフォール注入症候群が発症しやすいことを示唆しており、カルニチンによるプロポフォール注入症候群発症抑制の可能が示され、今後臨床利用においても重要な可能性を示したと考えられる。 肝細胞を用いたエネルギー基質の利用をミトコンドリアにおける酸素消費量の測定の面から検討した。細胞実験でも動物実験の結果を裏付けるように、プロポフォールは脂肪酸利用を抑制するが、カルニチン添加により糖・アミノ酸・脂肪酸といったエネルギー基質の利用効率が改善されていた。プロポフォール注入症候群は重篤な疾患であるが、今だ原因や予防法については明らかとなっていない。今回に基礎研究で示唆された結果を基に今後さらなる研究を進め、臨床利用をめざしていきたいと考えている。またプロフォール注入症候群の別の発症機序として指摘されているプロポフォールの直接的なミトコンドリア機能への影響についても検討していく予定である。
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