昨年度は、生後4週のマウスにセボフルランを吸入させたのち、8週で驚愕反応試験を施行したが、学会発表でそのような長期にわたり記憶が維持されるならセボフルラン吸入直後も同様であることを調査すべきであるという意見があった。それを鑑み、今年度は週齢から思春期のマウスに相当する生後4週の雄C57BL6マウスを用いて、驚愕反応試験直後にセボフルラン2.5%を3時間吸入させ、その吸入が24時間後の記憶(長期記憶)に及ぼす作用と各個体から摘出した脳で海馬でのF-アクチン構成、F-アクチン構成に関与するrac-1タンパク発現、および活性酸素産生の変化について比較検討した。その結果、セボフルラン吸入は恐怖記憶を増強し、海馬でのF-アクチンの構成およびrac-1タンパクの発現を増大させた。しかし、活性酸素レベルには差はなかった。この後、恐怖記憶増強個体の海馬で、Glo 1活性が増大すると共にMG活性が低下して、電気生理で長期増強を認めるか、Glo 1阻害薬の全身投与で麻酔薬による恐怖記憶定着増強作用は阻止できるか、また、Glo 1 遺伝子ノックアウトマウスでも同様か、について検討する計画である。ただ、本年度はDMSO投与量や濃度に関する予備実験を行うゆとりがなかったため、これに関しても時間を要する可能性がある。しかも、本年度は、驚愕反応検査のタイミングを変えて全ての検討を行ったため、研究計画が大幅に遅れることとなった。一方で、これらの一連の結果を論文として出版することができた。
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