平成29年度はこれまでに引き続き、週齢から思春期のマウスに相当する生後4週の雄C57BL6マウスを用いて、驚愕反応試験直後にセボフルラン2.5%を3時間吸入させ、その吸入が24時間後の記憶(長期記憶)に及ぼす作用について比較検討した。行動薬理実験に際しては、実験開始1時間前にマウスを室温24℃に保った実験室へ移し環境に慣れさせた。生理的条件を一定にするため、9-12時の固定した3時間以内ですべての個体についての実験を終了した。測定には、現有のSMARTビデオ行動解析システム、パッシブアボイダンスケージなど一式を用いた。各個体の行動を現有のデジタルビデオカメラで記録してパーソナルコンピュータにビデオファイルとして取り込み、行動解析システム附属のソフトウエアで各パラメータを算出した。これらの結果についてはこれまでの結果と同様に、セボフルラン吸入がむしろ恐怖記憶を増強させた。さらに、これらの個体での体血管の反応性変化を検討してみたところ、セボフルラン吸入個体でのみアセチルコリン(10-9 - 10-5 mol/L)による大動脈の内皮依存性拡張反応が有意に低下していることが明らかとなった。一方で、海馬でのGlo 1活性に関する研究では、最終的に安定して個体が生存するDMSO溶媒濃度を設定することができなかったため、水溶性の別のGlo 1阻害薬がこれらの実験に必要ということのみ結論づけられた。可能であれば、ノックアウトマウスを用いた実験を含め今後の検討課題にしていくつもりである。以上、研究内容に変更は発生したが、今後の研究課題を見つけることができ実り多い一年であった。
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