研究課題/領域番号 |
15K15578
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三野 和宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80750380)
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研究分担者 |
嶋村 剛 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00333617)
深井 原 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60374344)
木村 太一 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90435959)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 虚血再灌流 / 臓器保存 |
研究実績の概要 |
冷保存後の細胞に対する遺伝子導入、あるいは、転写活性制御によってタンパクの発現レベルを制御可能であり、至適温度、限界温度が存在することを示すために、以下の検討を行った。 1) 腎尿細管細胞のタンパク発現(量)、活性の制御に関する基礎的な検討を行った。まず、ヒト尿細管上皮細胞株 (HK2)の正常培養条件、UW液による冷保存、その後の復温、の各条件の細胞を作成した。a) ATP量、b) 細胞死 (LDH漏出)、c) バイアビリティー (MTT assay)、d) 細胞質タンパクの動態 (ウェスタンブロット)、を評価した。定常状態、冷保存におけるATP量、バイアビリティー、生存、死の推移が明らかになり、関連するタンパクの発現量、リン酸化動態も明らかになった。これらの結果は、今後、冷保存温度や培養液を変化させた際に、その効果を比較するための対照となるデータである。2) 上記の各群の細胞の各タンパク、total RNAを採取した。3) 今後の検討に使用するG-luc, GFP, mCherry, 14-3-3zeta を導入したHK2細胞を樹立した。 4) ラット腎を摘出し、冷保存後に体外で再灌流するために、単離腎灌流モデルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
冷保存温度と細胞障害、バイアビリティーの検討を開始する前に、樹立に時間を要する(可能性があると考えた)、各種の遺伝子導入細胞の作成を先行させた。予想通り、安定強制発現細胞株のシングルセルクローンの樹立に時間を要したため、冷保存温度条件、miR214, miR451に関する基礎的検討に着手できなかった。しかし、全体計画の中では、これらは相殺可能な範囲と考えられ、細胞実験のみを考慮するとほぼ計画通りと評価できる。 腎臓を用いた研究も、温度条件の検討に至っておらず、細胞実験に要した時間、労力の分、臓器レベルの実験が遅れてしまった。すなわち、腎の冷保存再灌流のモデルは確立できたが、体外灌流による修復後に再灌流するモデルの基礎的検討が未着手である。この点を考慮し、全体としてはやや遅れていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
ラット腎臓の体外灌流モデルの検討に重点をおいて、臓器レベルでのエビデンスを得ることを目指す。腎臓レベルでの解析から得られた結果を細胞実験で証明する方向で検討を進める。一方で、14-3-3zeta強制発現細胞における酸素化冷保存の有用性が示せた場合には、酸化的リン酸化のエネルギー源としてのオートファジーに焦点を絞って、細胞、臓器レベルの検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究データの秘匿を要するため、H27年度に予定していた学会発表を延期した。その分の旅費をH27年度の消耗品費に充当したが、ラットの週令や飼育期間の誤差により、1922円の剰余金が発生したものである。 なお、H28年度の物品費からH27年度に計上した旅費相当額をH28年度の旅費に充当する。すなわち、研究期間全体としては、消耗品費、旅費の使用額に大きな変動はない。
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次年度使用額の使用計画 |
1922円はH28年度予算に組み込み、消耗品費に充当する。もとより、研究に必要な費用の全てが本研究費によって充足されているわけではないので、誤差が生じても必要な物品の購入により全額を使用する。具体的には、動物実験に使用するラットの購入費用の一部に充当する。
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