研究課題
血清N-glycanプロファイル解析による抗体関連拒絶 (ABMR) 予測の有用性について検討した。 方法: 197症例の生体腎移植後1日目の血清から質量解析によりN-glycanプロファイルを決定した。血清検体は、腎生検でABMR(TCMRとの合併例も含む)と診断された16症例, TCMRと診断された40症例および生体腎移植後、ABMRおよびTCMRを発症していない141症例、合計197症例を収集し、N-glycomicsによって各レシピエントの血清糖鎖プロファイルを調査した。 血清N-glycomicsは、10 μLの血清を全自動糖鎖回収装置の制御下でグライコブロッティング法 により、回収されたBenzyloxiamine (BOA)標識血清N-glycanをMALDI-TOF MSで解析することによって行った。 糖鎖構造は、GlycoMod Toolによって決定した。各糖鎖の定量再現性は、外れ値3個以上、検量線の傾き3.0以上および相関係数0.05以上の規定範囲外の検体を除外し、定量再現性を担保した検体のみを統計解析に供した。臨床的ABMRおよびTCMRは、Banf分類に従って診断した。Preformed-DSAの検出は、FlowPRA Single antigen kitによって評価した。 説明変数をABMRの有無、目的変数を36種のN-glycan、レシピエント性別、移植時年齢として判別分析し、得られた関数より作成したABMR予測式からN-glycan Scoreを算出した。ROC曲線およびKaplan-Meier曲線によりABMR診断精度を評価した。結果: ABMR予測に関するN-glycan scoreのAUCは、0.8916とDSA(0.7619)よりも有意に高く、陽性診断率81.25%、陰性診断率86.74%であった。N-glycan score陽性症例は、有意にABMR発症期間が短かった。結論: N-glycan scoreは、ABMR予測に寄与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
既に197症例の生体腎移植後の血清の質量解析によりN-glycanプロファイリングを終了している。ROC曲線およびKaplan-Meier曲線によりABMR診断精度を評価し、ABMR予測に関するN-glycan scoreのAUCは、0.8916とDSA(0.7619)よりも有意に高く、陽性診断率81.25%、陰性診断率86.74%であることを明らかにしているため、研究は順調に進展していると判断した。
今後は、糖鎖のキャリアタンパク質に関する検討を実施する。これまでの検討から、キャリアタンパク質は免疫グロブリンである可能性が高い。そこで、今後はキャリアタンパク質の同定を行う予定である。キャリアタンパク質が同定されれば、そのペプチドグリカンを抗原にしてモノクローナル抗体の作成を試みる。最終的には樹立したモノクローナル抗体を組み込んがアッセイ系を開発して、抗体関連拒絶予知のためのバイオマーカーとして臨床応用したい。
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