研究課題/領域番号 |
15K15582
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
横山 修 福井大学, 医学部, 教授 (90242552)
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研究分担者 |
伊藤 秀明 福井大学, 医学部, 准教授 (00345620)
黒川 哲之 福井大学, 医学部, 助教 (70529346)
関 雅也 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (70572444)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス / 副腎皮質刺激ホルモン放出因子 / メタボリック症候群 / 下部尿路機能障害 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
慢性ストレスはメタボリック症候群のリスク因子であるが、脂肪細胞自体にも作用し、機能障害から各種炎症性サイトカインを増加させる。慢性ストレスは視床下部の室傍核で合成される副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)を増加させ、個体レベルのストレス反応の中核をつかさどる伝達因子とされる。最近になりその受容体が膀胱にも存在することが明らかとなった。CRF受容体にはR1とR2のサブタイプが存在し、前者は下垂体前葉などに発現してACTH分泌促進、不安関連行動や抑うつの惹起などを引き起こす。後者は視床下部、扁桃核、縫線核、骨格筋、心筋、血管壁に存在する。膀胱ではCRFR2が存在し、cyclophosphamide膀胱炎では発現は増加する。われわれはストレス負荷ラット膀胱にCRFが増加すると報告したが、肥満に伴う各種メディエータが増悪因子になって機能障害を惹起しているという仮説をたてた。 平成27年度はコミュニケーションボックス法を用いた慢性ストレスが下部尿路機能にどのような影響をもたらすか検討した。病態モデルとしてSHR(自然発生高血圧ラット)を対象とし、心理ストレス負荷をかけても1日の排尿回数、1回の排尿量有意な差がないことが解った。Real-time PCRを用いて摘出膀胱壁におけるCRF発現と、CRF R1 の測定を行った結果、ストレス負荷によりCRF自体とCRF R1発現の亢進を認めた。また、摘出膀胱の薬理実験を行った。平滑筋切片はphenylephrineとcarbacholに対して収縮反応を示すが、CRFの追加投与はcarbachol収縮を増強した。ムスカリン受容体はM1からM5が存在するが、M3発現が亢進しているデータも得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はin vivoとin vitroから慢性ストレスの下部尿路機能への影響について検討することを目的とした。病態モデルとしてはOLETFラット(メタボリック症候群)、SHR(自然発生高血圧ラット)、DSラット(Dahl-Iwai S; 食塩感受性高血圧)を対象とし、心理ストレス負荷をかけ、排尿行動のモニターを行う予定とした。27年度はまずSHRから始めた。代謝ケージによる排尿パラメーターの測定、摘出膀胱の膀胱壁におけるCRFの測定を行って、対照のラットとの比較を行う。次に摘出膀胱のCRF投与時の薬理実験を行った。CRF単独では膀胱収縮を惹起できないが、carbachol投与下であればその収縮を修飾できることが解明され、CRF receptor 1を介している可能性が示唆された。ムスカリン受容体はM1からM5が存在するが、M3発現が亢進しているデータも得られており、CRFの遺伝子レベルで関与も示唆される。 このようにSHRにおいて着実に計画は進行しており、今後CRF receptor 1 antagonistの影響も検討する予定である。他の病態モデルには今後の検討課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
ストレス負荷なしの膀胱平滑筋切片に対するcarbachol収縮に対し、ストレス負荷は反応の増加を認め、またCRFを投与することでさらに増強された。ではストレス負荷なしの膀胱平滑筋切片に対してCRFはどのような反応を示すのか。今年度解析する。CRF receptor 1 antagonistの存在下ではその増強反応はどのように修飾されるのか、また膀胱平滑筋におけるM3発現は減弱するのか、今年度の課題としたい。 さらに本研究ではSHRを病態もでるとして用いているが、病態のコントロールとしてのWiter ratでストレスはどうような影響をもたらすのか。ここにストレス負荷時の血圧の影響がどのように関与しているのか、まだ未解決の課題は沢山あり、病態モデルとしてのOLETFラット、DSラットにおけるストレス関与にまでは至っていない。研究の実施速度を増して対応したい。
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