研究課題/領域番号 |
15K15589
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
藤井 秀岳 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (10405318)
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研究分担者 |
本郷 文弥 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80291798)
上田 崇 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50601598)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / VEGF-A / DDS / 腫瘍免疫 / siRNA |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、血管新生因子であるVEGF-AをターゲットとしたsiRNAとナノDDS(drug delivery system;ナノゲル)を用いた遺伝子治療により腎細胞癌の血管新生を抑制することによって、抗腫瘍効果を得ることである。 具体的な手法として、3種類のVEGF-A特異的なsiRNAを購入し、in vitroにおいて導入試薬ReverTra Ace(R)(TOYOBO)を用いてBALB/cマウス自然発生腎細胞癌株(Renca細胞)に導入し、リアルタイムRT-PCRにてVEGF-A遺伝子のノックダウン効率を評価することによりsiRNA(以下siVEGF-A)の選定を行った。 次に、DDSとしてナノゲルを用いたsiVEGF-A導入方法の検討を行った。温度やsiRNA濃度、混合時間を変えて作製したsiVEGF-A/ナノゲル複合体を用いたところ、複合体作製至適条件として25℃の温度下で30分間の混合時間、40μg/μLに調整されたsiRNA を用いると最も効率が良いことが判明した。 動物実験であるが、マウス腎癌皮膚転移モデルとして5×105個のRenca細胞をBALB/cマウス(メス、9週齢)の右腹部皮下に移植して作製した。腫瘍移植後2週間目に腫瘍経が約50mm3の大きさになったものを以降の実験に使用した。まずin vivoでの安定性を確認するためにFITC標識されたsiRNA(FITC-siRNA)とナノゲルの複合体を作製した。マウス腫瘍に局所注射し、24時間後に腫瘍を摘出した後、蛍光顕微鏡でFITCシグナルを確認した。すると、FITC-siRNA単独注射群ではシグナルは消失していたが、ナノゲル複合体群では腫瘍内でのシグナルを確認することが可能であり、生体内での安定性が示唆された。 今後、in vivoにおける抗腫瘍効果の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度はおおよそ予定通りに進行している。in ivivoの実験については動物搬入や腫瘍移植に時間が割かれるために、予想よりも進行がやや遅れている。今後、科研申請書あるいは下記12に記載の通り、動物実験をメインに抗腫瘍効果や生体内の免疫機構の解析を行ってゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述の担癌マウスモデルを用いて、3日おきに計5回siVEGF/ナノゲル複合体を腫瘍局所投与し治療を開始する。1回の注射量として50μl(siRNA20μg/匹)を予定している。その間、腫瘍径を測定することで抗腫瘍効果を確認する。Untreatment(無治療)、siVEGF単独、ナノゲル単独、siVEGF/ナノゲル複合体、control-siRNA/ナノゲル複合体群間での比較検討を行う予定である。 治療終了後に腫瘍を摘出し、腫瘍重量比較による抗腫瘍効果を検討する。さらに、CD31抗体による免疫染色を施行後、染色エリアをカウントすることにより、microvessel density(MVD)を算出し、腫瘍内の血管新生について評価する。腫瘍内のVEGF-A遺伝子抑制を解析するために、摘出腫瘍細胞からRNAを抽出した後、リアルタイムRT-PCRにて遺伝子抑制について解析する。 免疫学的検証として、マウス脾臓を摘出後に脾臓細胞を抗CD3抗体、抗CD11b抗体、抗Gr-1抗体で染色し、T 細胞やMyeloid derived suppressor cell (MDSC)の蓄積をFACS解析する。また、Treg細胞を評価するために、リンパ球刺激培養後(2μl/ml Mause T-Activator CD3/CD28、10 ng/ml TGF-β1、200 IU/ml IL-2:48hの予定)、抗CD4抗体、抗CD25抗体、抗Foxp3抗体で染色し、FACS解析する。また、治療群と非治療群、コントロール群のマウス血清を用いて、Mouse Th1/Th2/Th17 CBA kit(BD社)を使用し、マウス個体における炎症性サイトカインを測定し、免疫機構の改変について解析する予定である。
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