研究課題/領域番号 |
15K15592
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有馬 隆博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80253532)
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研究分担者 |
岡江 寛明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10582695)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生殖医学 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
DNAメチル化は、発生のプログラムに従い、極めてダイナミックに制御され、核のリプログラミング、ゲノムインプリンティング(GI)などに重要な役割を果たす。本研究では、ヒト初期発生過程におけるDNAメチル化の挙動を明らかにするため、ヒト配偶子および胚盤胞、胎盤絨毛細胞を用い、一塩基解像度の網羅的なDNAメチローム解析を行った。また、ゲノムの構造、機能的領域分類とメチル化状態の特異性について検討し、受精後の脱メチル化機構およびGI機構について明らかにした。さらに、マウス生殖細胞のメチロームと比較した結果、類似点及び相違点を明らかにし、論文投稿した。現在、貴重なヒト微量検体を解析可能な、新規のエピゲノム解析技術の開発に挑んでいる。本年度は、ヒト精子(2検体)、卵子(数百個)、胚盤胞(数個)、妊娠初期胎盤(細胞性栄養膜細胞)(2種)について全ゲノムメチローム解析を行った。卵子のDNAは、PBAT法を用い、全ゲノムを増幅させて行った。その結果、各細胞のメチル化率が、マウスの各細胞と類似することが判明した(ヒト卵子:53.8%、精子:75.4%、胚盤胞:25.7%)。また、マウスとは異なり初期化の過程で卵子からのDNAは脱メチル化しないことも判明した。また、インプリント遺伝子の数(442遺伝子)や発現を促進する遺伝子間のメチル化がマウスより多く、メチル化に働く酵素にも違いがあることが判明した。また、胎盤におけるX不活化現象について、細胞性栄養膜細胞(11例)を用いてX染色体全領域について解析した。その結果、2例を除いて母由来遺伝子の発現が認められ、マウス同様父由来遺伝子の選択的不活化現象が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ヒト卵子、精子、胚盤胞、初期胎盤細胞の収集と精製:文部科学省、日本産科婦人科学会へ研究の申請を行った後、十分な説明とインフォームドコンセントを得て、ヒト検体の収集を行った。 2)超微量検体を用いたメチローム解析の確立した。 3)次世代シーケンサーを用いた大規模配列解析:ライブラリーの作製には、PBAT法を用い、ライイブラリー作製後、HiSeq2500を用いて大規模シーケンス解析を行った。卵子および胚盤胞についてはそれぞれ7億リード(700億塩基、ゲノムカバー率x20に相当)、精子、胎盤については6億リードを取得した。 4)シーケンスデータのマッピング:3)で得られたリードのマッピングおよびメチル化率の算出には、メチル化解析プログラムBismarkを用いた。また、リードおよびメチル化状態の可視化にはゲノムブラウザIGVを使用した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に作成したメチロームプロファイルについて、各種情報の抽出および生物統計学的解析を行う。また、新規のエピゲノム解析技術の開発に挑む計画である。 1)構造、機能領域分類とメチル化制御の解析 2)インプリントDMRの同定とその維持・消去機構の解析: 3)マウスメチロームとの比較解析: 4)新規エピゲノム解析技術の開発とアクセシビリティを考慮したデータベースの構築
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