研究課題
現行の顕微授精(卵細胞質内精子直接注入法, Intracytoplasmic sperm injection: ICSI)は精子注入時の卵子の紡錘体の損傷・細胞骨格の破壊等が指摘されている。近年の生殖医療において、挙児希望女性の高年齢化に伴う卵子の質の低下は大きな問題であり、より卵子へのダメージの少ない顕微授精技術の改善が望まれる。また、生殖医療においてICSIによる受精率、変性率、胚発育には、少なからず技術者間の差が認められ、より平易な臨床技術の開発および標準化は、依然として望まれる。顕微授精により卵子が最もダメージを受けるプロセスは、卵細胞膜の穿破と細胞質の吸引である。この卵子内への精子導入工程の自動化、すなわち卵子と精子の人為的膜融合が可能となれば、卵子へのダメージの軽減および技術者間の差の最小化が期待される。本研究では、次世代の顕微授精法の実現に向け、卵子内への精子の導入を自動化する卵細胞膜穿破を介さない新規顕微授精法の確立を目的とし、マウスをモデルとして不活化センダイウイルスを用いた精子・卵子の膜融合による受精実験を実施した。まず、精子先体外膜除去の為、Ca ionophore A23187を用いた人為的先体反応誘起実験を行った。精子内カルシウム濃度の上昇により先体反応の進行および先体内膜の露出が起こったが、先体反応誘起処理後にセンダイウイルスを用いた融合実験を実施した結果、最終的に精子・卵子の膜融合には至らなかった。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
PLOS ONE
巻: 12 ページ: e0175150
10.1371/journal.pone.0175150
Reproductive Medicine and Biology
巻: 16 ページ: 258~267
10.1002/rmb2.12042