研究課題
胚盤胞の非侵襲的着床前遺伝子スクリーニングNIPGS法の開発を目的として、前年度の培地蛋白情報による診断に続き、今年度は胚盤胞培地中の核酸情報による診断の可能性を検討した。ヒト体外受精胚の培養済み培地からRNAを抽出し逆転写後にPCRによる増幅を行った。21番染色体特異配列などを含め複数のプライマーセットで検出を行ったところ、増幅シグナルが検出されたが、検討の結果その多くが環境由来DNAの混入によると推定された。したがって、体外受精胚培養に用いられた培地中に胚由来DNAが存在するがその量は少ないこと、また環境由来DNAの混入があることが示された。したがって、臨床応用に向けて検出感度の向上とともにコンタミネーションへの対策が必要と考えられた。次に、培地中miRNAの検出と診断応用への可能性を検討した。その結果、培地中に胚由来miR22が存在していることが示され、miRNAはNIPGSの候補であることを確認した。次に、培地中のミトコンドリアDNAのNIPGSへの応用の可能性について検討した。研究に同意の得られた廃棄胚を培養し、発育のみられた胚培地からDNAを増幅しNGSを行った。その結果、すべての胚でミトコンドリアDNA Dループ可変領域の配列を得ることができた。これを胚のゲノムDNAのNGS結果と照合したところ、11検体中7例で培地DNAと胚DNAが一致、3例でminor allele drop outが示唆され,1例については30%程度のヘテロプラスミーの存在が疑われる結果となった。これらの結果から、培養胚の一部にヘテロプラスミー胚が存在している可能性があること、培地によるヘテロプラスミー診断の可能性があることが示唆された。しかし、ヘテロプラスミー頻度が低い場合には培地検体ではヘテロプラスミーの検出ができない可能性があることが示された。
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