研究課題
着床に関する研究は生命科学の研究対象として興味深いだけではなく、生殖医学の見地からもその成果は不妊治療への応用や避妊法の開発という点で現代社会からの要求が高まっている分野である。受精卵が胚盤胞となって子宮内膜管腔上皮に接着し、胚盤胞の外側細胞を構成する栄養膜細胞が子宮内膜間質に浸潤し、子宮内膜における血管新生が活性化され、分化した絨毛外栄養膜細胞と子宮内膜由来の血管内皮細胞によって血管が形成され、子宮からの血液の流入により胎盤・胎児が相対的に高酸素となる。このようにして胎盤が形成され胎児の発育が可能となる。着床時のヒト子宮内膜表面は子宮筋層近くの子宮内膜と比べて低酸素状態である。着床直後の子宮内膜にはVEGFなどの血管新生因子が胚周囲に発現し急速に血管新生が進み、子宮内膜の酸素化が促進され胎盤形成が起こる。着床期の子宮内膜とそこに存在する胚は生理的な低酸素状態であり、着床期子宮内膜の低酸素状態が正常な着床・胚発育・胎盤形成に重要であることが推測される。本研究では、着床前の子宮内膜の低酸素状態が正常な着床や胚発育に重要であるという仮説のもと、転写因子である低酸素誘導因子HIFに着目し、子宮特異的なHIF欠損マウスモデルを作成し、マウス生体でのHIFの機能解析を行うこととした。まず着床期の子宮内膜が低酸素状態であることを野生型マウスの着床期子宮についてpimonidazole法を用いて確認した。次に、子宮内膜の低酸素応答、特に低酸素誘導因子HIFが着床、胎盤形成、胚発育に貢献しているかどうかを検討するため、HIF-2αの子宮特異的遺伝子改変マウスを作成した。HIF-2αの子宮特異的遺伝子改変マウスは着床障害をきたし、着床位置の異常と脱落膜化の異常をきたしていることが判明した。本研究により、子宮の生理的な低酸素状態による子宮の低酸素応答が、着床や胚発育に影響を及ぼしている可能性が示された。
学会賞:原口広史(大学院生、博士課程4年)平成27年度日本生殖医学会学術奨励賞、松本玲央奈(大学院生、博士課程3年)第30回日本生殖免疫学会学会賞ベストポスター賞(基礎部門):松本玲央奈(大学院生、博士課程3年)31st ESHRE Annual Meeting (ESHRE 2015)(Portugal, Lisbon)2015.06.17
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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