研究課題/領域番号 |
15K15601
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
塩沢 丹里 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20235493)
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研究分担者 |
樋口 正太郎 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (50750098)
大平 哲史 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (90397315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胎盤 / 老化 / cell senescence / cytotrophoblast / syncytiotrophoblast |
研究実績の概要 |
ヒト胎盤は約40週で機能的な老化を迎えるとされ、この胎盤機能を正確に評価することは適正な分娩時期の決定に重要であるが、現在臨床的に有用なマーカーはない。我々は胎盤組織から採取した新鮮組織を凍結保存し、細胞レベルでの老化(cell senescence, CS)の簡便なマーカーであるSAβGalの発現を免疫組織化学的に検討し、初期や中期の正常胎盤でCT(cytotrophoblast)にβGalの発現を認め、妊娠後期ではST(syncytiotrophoblast)にβGalの発現を認めるという特徴的なパターンを見出した。特にβGalがCT優位で確認されることから、CTからSTへの合胞体化においてCSが関与と考えられた。また妊娠初期、中期、後期絨毛のパラフィン包埋切片を用いて老化マーカーとして知られるp16、p21、PMLの発現・局在を免疫組織化学的に検討したところ、CTでは初期から後期にかけてこれらのマーカーが一貫して高発現していたが、STでは初期に発現は低く、中期さらには後期になるにつれて発現が増強していた。続いてCTのモデルとして絨毛癌細胞株であるBeWo細胞を用いて、Forskolinを添加してBeWo細胞の合胞化を促進し、Western blot法でβGalおよびCS関連蛋白の発現を検討した。BeWo細胞の合胞化が促進された状態ではβGalおよびp21、PMLの蛋白発現はいずれも増強していた。以上より、妊娠初期のCTにはCSを起こしfusionするものがあり、妊娠後期になるとCTはCSを起こして合胞化していくこと、また後期にはSTにもCSが認められるようになり、この繰り返しによってSTを補充するCTの数が減少して絨毛自体の機能低下につながることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、当初の予測どおり胎盤には老化現象がおきること、さらに絨毛細胞ごとに異なる老化パターンが観察され、両細胞が協調しながら胎盤全体の老化に関与していることを見出された。ただし、老化関連物質(SAβGal、p16、p21等)発現をmRNA(real-time RT-PCR法)レベルでも検討していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には計画書に沿って研究を進めていく。妊娠初期、中期、後期、PIHおよびFGR症例の娩出胎盤組織から抽出したmRNAおよび分離培養絨毛細胞から抽出したmRNAを用い、妊娠期間や疾病状態にある胎盤での発現遺伝子の差をマイクロアレイで解析し、発現変化の大きな遺伝子のうち、CSや妊娠に関連のある物質に注目し候補遺伝子の同定を行う。研究は教室および大学の設備を利用して行う。
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