研究実績の概要 |
本課題は卵巣癌における包括的細胞骨格制御システムを解析し、再発卵巣癌のもつ癌-腹膜中皮相互EMTモデルの関連性を追求する実験系を構築する研究である。卵巣癌 (OC) の腹膜転移形成と二次転移の機序は、1) primary cancerからの腫瘍細胞の遊離, 2) 体腔内中皮細胞への接着 (adhesion), 3)中皮細胞間隙への潜り込み(intercalation), 4) 基底膜の分解, 5)基底膜下の細胞外基質を分解と移動, そして6)血管上皮細胞への潜り込み⇒血流・リンパ流へ進入などのプロセスから成り立つ。本年度は上記3), 4),5)に関連し、filopodiaの主要なタンパクの一つであるFascin及びアクチン繊維状を動くモータータンパクの一種であるMysin Xの分子機構的機序に関して研究を行った。研究成果の概要を以下に示す。1) 独立した6種のOC細胞株において高転移性とMyosin Xの発現に正の相関を認めた。2) Human mesothelial cellsを用いた中皮間隙intercalation assayおいて、Fascin / Myosin Xのダブルノックダウンがintercalationを有意に阻害し、中皮間隙への腫瘍のintercalationに重要な一役担うことが示された。3) Cortactin, CSPG4, およびHS1のノックダウンを用いた腫瘍運動の抑制系実験の結果、中皮細胞間隙へのintercalationは、細胞運動能とは非依存的に、Fascin, Myosin Xによる独立した制御系を介することが判明した。4) GFP-fascinを発現したOCが中皮細胞間隙へintercalationする際に、有意にfilopodiaを芽出することが観察された。5) Fascin強制発現OCによる、FITC-gelatin degradation assayの結果、対照比較で、約5倍のOCが、FITC-gelatinの分解能を有することが判明した。本年度の研究成果から、OCでも、Fascinが基底膜の分解に重要な役割を担っている事が示唆された。基底膜の分解におけるmyosin Xの役割の解明については、次年度の課題である。
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