研究課題
卵巣癌が腹膜播種を形成する際に、腫瘍細胞が中皮細胞へ接着し、さらにその間隙を透過していく過程は重要な成立構成要素の一つである。本課題はfilopodia形成に重要なfascin (FSCN1)とmyosin X (MYO10)の二つの分子に着目し、卵巣癌細胞が中皮細胞を透過する(trans-mesothelial intercalation: TMI)メカニズム解明を主眼とした研究である。最終年度である平成28年度に得られた新たな知見は以下の通りである。1) FSCN1 あるいは、MYO10 のノックダウンにより、TMI効率は有意に抑制された。2) FSCN1、またはMYO10の発現抑制によって、細胞表面のfilopodia の数、長さ、寿命を減少することが、卵巣癌細胞のTMIにおいては、lamellipodiaよりfilopodiaの方が重要性が高いと考えられた。3) N-WASP阻害剤wiskostatin (10μM)あるいは汎MMP阻害剤(GM6001)の添加は、卵巣癌細胞のTMIに影響を及ぼさないことが判明した。4) 内在性のFSCN1よりGFP-FSCN1を数倍量強制発現させたSKOV3細胞は、GFPのみ発現させた細胞に比べて、播種2時間後の時点において2倍以上のTMI効率の上昇が見られた。FSCN1の強制発現によりTMI効率の上昇の結果が認められ、少なくともFSCN1は、癌細胞のTMIにおいて重要な役割を担うことが結論された。MYO10のノックダウンの効果、N-WASP阻害剤の効果を加味すると、この過程においては、lamellipodiaよりfilopodiaの方が重要であると示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件)
Nat Commun
巻: 8 ページ: 印刷中
10.1038/ncomms14470.
J Vis Exp
巻: 78 ページ: 407-414
10.3791/54353.
Oncoimmunology.
巻: 5 ページ: e1238542
10.1080/2162402X.2016.1238542.
Oncol Rep.
巻: 35 ページ: 2543-52
10.3892/or.2016.4653
Cancer Med.
巻: 5 ページ: 1081-92
10.1002/cam4.683.