研究課題
本研究では、着床不全・流産の病態を幹細胞維持機構と周囲微小環境(ニッチ)の破綻、その結果としての細胞老化誘導という新しい視点でとらえ、着床・初期胎盤形成における絨毛・子宮内膜の幹細胞の果たす役割を解明することを目的とした。1)絨毛SP細胞の分離と特性の解析:ヒト絨毛外栄養膜細胞(EVT)より樹立された絨毛細胞株(HTR8-SVneo)を用いてSP細胞とnon-SP細胞を分離した。SP細胞は自己複製能を持り、nonSP細胞に比べて運動能の亢進がみられた。。マイクロアレイ解析にてSP細胞に発現量の増加がみられる遺伝子群やシグナル経路を同定した。リンパ球抗原であるLy6DがSP細胞において最も発現が亢進し、分化に伴い発現が低下した。siRNAによるLy6Dの発現抑制によりSP細胞の割合は低下した。2)ヒト子宮内膜細胞の幹細胞維持や細胞老化に関与するシグナルと着床との関連の解析:不妊治療中で着床の結果がわかっている患者の着床前に採取された子宮内膜の初代培養細胞を用いて、 SP細胞の出現率や幹細胞・EMT・細胞老化やSASP(Senescence-associated secretory phenotype)関連シグナルを解析し、着床率との関与を解析した。着床不成功例では成功例に比較し、老化細胞率・p21の発現・細胞周期でのG0/G1期の割合が有意に高かった。また、両者の間で分泌が亢進しているサイトカインの種類に違いが見られた。興味深いことに、幹細胞マーカーの一つであるALDH1の発現はマウスでは老化により減少し、着床不成功例で老化細胞数増加とともに、減少していた。また、SASPに関連することが報告されている複数のサイトカインの発現や分泌が老化マウスや着床不成功例でそれぞれ亢進していた。
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