研究課題/領域番号 |
15K15611
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
北出 真理 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20266026)
|
研究分担者 |
折茂 彰 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70275866)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 子宮内膜症モデルマウス / 線維芽細胞 / HLA 1 ABC抗体 / Ki-67抗体 / ジェノグラフトモデル |
研究実績の概要 |
子宮内膜症モデルマウスの多くは、マウス子宮を他のマウスに移植するアログラフトモデルが主流であり、外科的に切除された患者子宮内膜症病変部を免疫不全マウスに移植したジェノグラフトモデルの報告は極めて少ない。ヌードマウスなどの免疫不全マウスへのヒト組織の移植は、残存した一部の免疫細胞による拒絶が生じることにより、その生着率は低いことが文献的に知られている。申請者らはT、BおよびNK免疫細胞を欠損した高度免疫不全 NOD/Shi-scid,IL-2RγKO マウス(以下NOG マウス)を用いることにより、外科的に切除された患者子宮内膜症組織を生着させる事を試みている。 具体的な成果)研究計画書と患者説明・同意書を作成し、院内の倫理委員会にて当該研究に対する承認を受けた。その後4例の患者より摘出した卵巣チョコレート嚢胞組織の一部(5mm3) を、NOGマウスの皮下と腹腔内に移植した(エストロゲンペレットと基底膜マトリックスを共に移植した)。その内1例で0.8cm×1cm程度のmassに増殖した症例が観察された。1回/週の頻度で移植片の大きさとマウスの状態を確認しながら、2-3ヶ月後を目安に卵巣および腹膜を含めた多臓器を採取する予定である。 今後は各臓器より標本を作製し、ヒト細胞特異的に反応するHLA Class I ABC抗体およびKi-67抗体を使用し、マウスに移植された患者由来子宮内膜細胞の浸潤・増殖性を確認する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究は院内倫理委員会でも初回審査において承認され、現在移植後1ヶ月が経過した数匹のNOGマウスにおいて移植組織の増大傾向を認めている。 共同研究者としては、平成28年度より1名の大学院生が同研究室に配属された。
|
今後の研究の推進方策 |
患者より外科的に切除された卵巣チョコレート嚢胞の残存組織片より繊維芽細胞(EAFs: endometriosis-associated fibroblasts)を抽出し、対照として同一患者の正常子宮内膜組織より正常線維芽細胞(CnFs: control normal fibroblasts)を抽出する。またDNAマイクロアレイ解析により、EAFsで発現の増加及び減少している遺伝子を同定する。 さらに、現在までに作製された上記の子宮内膜症ジェノグラフトをcollagenase でsingle cell suspension にして、新たなNOGマウスの皮下または腹腔内に線維芽細胞と共移植する。 その結果、EAFs群において子宮内膜症の浸潤を複数例で促進するか否か、また生着した組織が抗エストロゲン剤に対して抵抗性を示すか否かを、CnFsと比較の上評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
既受領額累計と支出額累計に差額が生じた理由は、当院マウス室改築のため2ヶ月弱の実験不可期間があり、使用したNOGマウスの数が予定よりも少なかった事に起因する。 また必要物品の一部を、共同研究者が属する講座から拝借した。
|
次年度使用額の使用計画 |
移植した子宮内膜症組織がNOGマウスに生着した事が確認された場合、早めに次のステップに移行する。次年度には以下の段階まで研究を進める予定である。 実験計画の詳細:子宮内膜症組織から線維芽細胞を抽出し、DNAマイクロアレイ解析を行う。さらにsingle cell suspensionにした患者子宮内膜症ジェノグラフトを線維芽細胞と共にNOGマウスに共移植し、子宮内膜症組織の進展を確認する。
|