研究課題/領域番号 |
15K15613
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
河村 和弘 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (10344756)
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研究分担者 |
高江 正道 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (00621301)
吉岡 伸人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10468928)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 卵胞発育 / PDE5 / cGMP / 不妊治療 |
研究実績の概要 |
我々はFSHがcGMPシグナルを介して顆粒膜細胞を増殖し、卵胞を発育させる分子基盤を明らかにしてきた。現在のところ、加齢などによりFSH刺激に低反応で十分な卵胞発育が得られない不妊患者に対して、卵胞発育を促進させる有効な治療法はなく、治療に苦慮することが多い。 そこで、本研究は、顆粒膜細胞内でcGMPを分解するphosphodiesterase 5 (PDE5)を標的とし、PDE5の機能を一時的に抑制することで、これらの患者の新たな卵胞発育誘導法の開発を行うことを目的とした。 これまで、PDE5抑制剤の1つであるSildenafilが、in vitroおよびex vivo試験において、マウス2次卵胞の顆粒膜細胞を増加させて卵胞発育を促進し、卵巣重量を増加させることを見出した。また、48-50週齢の高齢マウスに対し、Sildenafilを投与したところ、血中cGMPの上昇とエストロゲン値の上昇を認め、排卵数が増加した。さらに、排卵数が最大となるような、Sildenafil投与量と卵巣刺激プロトコールを確定した。Sildenafil投与マウスから得られた卵子の正常性を検証するため、体外受精胚移植を施行したところ、非投与群と比較して卵子成熟率、受精能、胚盤胞到達率、着床率、生児獲得率の全てにおいて差を認めなかった。さらに、得られた児および胎盤について形態学的、組織学的に解析したところ、特に異常を認めなかった。得られた児を交配して次世代まで飼育をしながら行動異常の有無、妊孕性について解析を行ったが、特に異常を認めなかった。 次にヒト顆粒膜細胞の細胞株を用いてSildenafilの効果を検討したところ、マウスの初代培養系とは異なる濃度でcGMPの増加と細胞増殖効果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Sildenafil投与マウスから得られた卵子の正常性に関して体外受精胚移植を用いて検証し、ヒト顆粒膜細胞および卵巣組織検体を用いた有効性試験を行った上で、ヒト臨床試験を実施する予定をしていたが、Sildenafil投与マウスから得られたマウス卵子の正常性検証を、エピジェネティックな観点からさらに厳密に実施する必要性が出た。また、ヒト卵巣組織検体を用いた試験は、予想に反して個体差が大きく更なる解析が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
Sildenafil投与マウスから得られた卵子の正常性を、エピゲノムレベルでより厳密に解析して非投与群と比較することで、その正常性について検証を行う。また、ヒト卵巣組織検体を用いた試験に関して、実施例を増やしてSildenafilの効果を解析する。これらの実験により、Sildenafilを用いた2次卵胞発育促進法の安全性および有効性が確認された場合は、高齢不妊患者を対象とした臨床試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Sildenafil投与マウスから得られた卵子の正常性に関して体外受精胚移植を用いて検証し、ヒト顆粒膜細胞および卵巣組織検体を用いた有効性試験を行った上で、ヒト臨床試験を実施する予定をしていたが、Sildenafil投与マウスから得られたマウス卵子の正常性検証を、エピジェネティックな観点からさらに厳密に実施する必要性が出た。また、ヒト卵巣組織検体を用いた試験は、予想に反して個体差が大きく更なる解析が必要となった。そこで、ヒト卵巣組織を用いた試験の一部、Sildenafil投与マウスから得られたマウス卵子の正常性解析の継続試験を、補助事業期間を延長して29年度に行うことになり、次年度使用額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
Sildenafil投与マウスから得られた卵子の正常性を、エピゲノムレベルでより厳密に解析して非投与群と比較することで、その正常性について検証を行う。また、ヒト卵巣組織検体を用いた試験に関して、実施例を増やしてSildenafilの効果を解析する。これらの実験により、Sildenafilを用いた2次卵胞発育促進法の安全性および有効性が確認された場合は、学会発表および論文投稿を行う。さらに、高齢不妊患者を対象とした臨床試験を実施する。
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