研究課題/領域番号 |
15K15615
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
欠畑 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90261619)
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研究分担者 |
伊藤 吏 山形大学, 医学部, 講師 (50344809)
渡辺 知緒 山形大学, 医学部, 講師 (60344793)
窪田 俊憲 山形大学, 医学部, 非常勤講師 (80536954)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内耳再生 / 幹細胞 / 内耳障害 / 音響暴露 / 外有毛細胞 |
研究実績の概要 |
内耳はその構造的特徴から、幹細胞を内耳再生の標的部位であるコルチ器へ誘導することが困難であるため、内耳幹細胞移植により有意な機能回復が得られたという報告はない。本研究では、コルチ器への幹細胞誘導の最大の障壁である基底板に130dB超の強大音にて基底板裂隙を生じさせ、さらに強い組織傷害によって産生される幹細胞誘導因子により、鼓室階から傷害部位であるコルチ器へ幹細胞を効率的に誘導する新たな効率的組織誘導法の開発へ挑戦する。 これまで内耳再生に用いられた内耳障害モデルは、115-120dBの音響暴露で作成されていた。今年度の実験で136dBの超強大音を発生させることのできる音響暴露システムの構築し、従来の音響曝露に比較してより強い内耳障害を惹起することに成功した。 動物はモルモット(Hartley strain, 250g~350g)を用いた。音響暴露条件は4-8kHz, band noise 136dB(A)で2時間暴露を行った。ABRにて聴力の評価を暴露前、暴露翌日、暴露後1週と2週に行った。組織学的評価はアクチン線維を染めるPhalloidin と有毛細胞マーカーであるMyosin7a、DNAを染色するDAPIを用いて三重染色を行った。基底回転~第三回転の5ヶ所を観察し、外有毛細胞の平均消失率を算出した。 聴力は音響暴露翌日では計測した全ての周波数でscale outとなり、その後2週までに15-25dBの閾値の改善を認めた。聴力評価後、動物を深麻酔下に安楽死させ蝸牛を摘出し組織学的評価を行ったところ、内有毛細胞は維持されていたが、外有毛細胞の多くが脱落している像が得られた。外有毛細胞の消失率は平均で92.8%(85.1~100%, n=5)であった。これらの結果は、136dBの強大音による音響暴露により、従来の音響曝露に比較してより強い内耳障害を惹起したことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実験で136dBの超強大音を発生させることのできる音響暴露システムの構築し、従来の音響曝露に比較してより強い内耳障害を惹起することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
内耳障害の観察 今回の結果は、136dBの強大音による音響暴露により、従来の音響曝露に比較してより強い内耳有毛細胞障害を惹起したことを示している。今後は、内・外有毛細胞だけではなく、支持細胞とらせん神経節への136dBの強大音による音響暴露の影響を観察する。支持細胞マーカーとしてp27Kip1やjagged 1を用いて、cryosectionにより支持細胞の残存状況を確認する。また、らせん神経節はTuj1を用いて音響暴露の影響を観察する。 内耳高度障害モデルの鼓室階へのMuse細胞移植 全身麻酔下に耳胞を開放し蝸牛を確認。蝸牛開窓術を行い鼓室階にMuse細胞を移植する。移植後1週、2週、4週で聴力評価を行う。聴力評価後、動物を深麻酔下に安楽死させ蝸牛を摘出。脱灰後免疫組織学的評価を行う。免疫組織染色には有毛細胞のマーカーとしてMyosin7a、espin、Myosin6、支持細胞のマーカーとしてSox2、jagged1、有毛細胞前駆細胞のマーカーとしてPax2、Pax8、jagged2、Prox1に対する抗体を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に研究分担者の物品費で繰越金が発生し、21,150円が翌年度繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験用動物、プラスチック器具、抗体試薬その他の消耗品費にあてる予定である。さらに次年度は研究成果発表のための国内外旅費に充当する予定である。
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