研究実績の概要 |
本邦における頸動脈小体腫瘍については、症例数が極めて少ないことからその全貌は不明であった。我々は当施設を研究代表とする「日本頸動脈小体腫瘍研究会(JCBTRG)」を組織し、まず「頸動脈小体腫瘍の全国調査(JCBTRG-1)」を全国約600施設の日本耳鼻咽喉科学会専門医制度の認定研修施設を対象に行った。その結果、回収率約50%で、20年間に経験された頸動脈小体腫瘍は約400例であった。そのうち、症例のデータが提供された25施設からの150例について詳細な解析を行って論文として発表した(Oncol Lett 15:3383, 2018)。女性が多く、94例が手術をしておりShamblin分類毎の手術時間や出血量なども明らかになった。少なくない症例が悪性で転移を示しており、希少がんといえる側面も明らかとなった。家族例は18例であった。本邦では頸動脈小体症例を始めとするいわゆるHereditary pheochromocytoma-paraganglioma syndrome(HPPS)の遺伝子変異の検査体制が整っておらず、この中にどれだけのHPPS症例が含まれるか不明である。「頸動脈小体腫瘍症例の遺伝子変異の検索全国調査(JCBTRG-2)」では, これまで40例以上の症例の同意を得て、SDH遺伝子群を始めとする遺伝子変異を解析している。preliminaryな結果ではあるが、およそ半数以上の症例に遺伝子変異が見つかっており、これまでの予想以上にHPPS症例が存在することが明らかとなってきた。頸動脈小体腫瘍の分類はこれまで前述のShamblin分類が使われてきたが、手術の適応に関しては十分とは言えず、術前に手術の容易度や頸動脈の合併切除の必要性などを推し量れる分類が必要である。我々は術前の動脈造影検査を基に手術適応を予測できる新たな分類法を考案した。現在、論文として準備中である。
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