研究課題/領域番号 |
15K15624
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤岡 正人 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70398626)
|
研究分担者 |
小川 郁 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00169179)
大石 直樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10348740)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 疾患iPS創薬 / WFS1 / Wolfram症候群 / 遺伝性難聴 / コモンマーモセット / 橋渡し研究 / ヒトiPS細胞 |
研究実績の概要 |
Wolfram症候群は糖尿病、視神経萎縮、尿崩症、難聴、尿路異常、多彩な精神症状などを合併する劣性遺伝疾患で、その原因遺伝子として小胞体機能に必須の膜タンパクwolframinをコードするWFS1遺伝子が同定されている。 本症候群の感音難聴は典型的には進行性の高音障害型感音難聴だが、変異によっては低音障害型を呈するとの報告もあり、なぜWolfram症候群患者において進行性難聴が生じるか、なぜ聴力型にバリエーションがあるかは明らかになっていない。そこで今回我々は、ヒトES/iPS細胞からの高効率内耳細胞分化系を用いて、Wolfram症候群患者から樹立された疾患iPS細胞より内耳細胞を分化誘導し、難聴発症の機序とその治療標的としての可能性を検討する。 平成27年度はこの第一段階として、まずWFS1遺伝子発現の”霊長類パターン”を同定した。すでに本年度、我々はさまざまな難聴遺伝子の霊長類蝸牛における発現パターンを、小型霊長類コモンマーモセットを用いて検討し報告してきた(Hosoyaら、Sci Rep 2016, Neurosci Res 2016, in revision 2016, Suzukiら submitted)が、マーモセットでのWFS1の遺伝子発現パターンは齧歯類と異なって血管条基底細胞にも認められた。 興味深いことにWFS1遺伝子変異を伴う遺伝性難聴の病理組織学的報告においては血管条の萎縮が報告されている。また渉猟し得る限りにおいて、WFS1遺伝子に関する遺伝子改変モデルではヒトの複雑なWFS1関連難聴が再現されていない。我々の結果は、WFS1難聴に関する種差の存在を示唆しており、特にヒト特異的な症候は、血管条基底細胞の異常に起因している可能性がある。この結果に基づいて、来年度からは血管条基底細胞に焦点を絞って疾患iPS研究を展開する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マーモセットを用いた検討により、疾患iPS研究において血管条基底細胞が解析対象として重要であると示したことは、今後の研究の方向性を確定する意味で大きい。他方入手した疾患由来iPS細胞からの分析に難航しており、全体としてはやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
疾患iPS研究において血管条基底細胞を誘導して解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞を用いた研究の初期段階で予想外に時間がかかっており、費用を要するその研究の後半部分が開始されないため、今回用いられなかった分を次年度の研究に用いる必要があるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
疾患iPS研究に用いる。
|