ヒト難聴責任遺伝子であるミオシンVI(MYO6)は複数の選択的スプライシングアイソフォームの発現が報告されており、我々はマウス内耳組織において9塩基(3アミノ酸)挿入アイソフォームが高発現することを明らかにした。そこでこのアイソフォームの機能を解析するための遺伝子改変マウスを作製し、解析した。 1.MYO6内耳高発現アイソフォーム特異的挿入9塩基変異マウスの解析:昨年度の実施状況報告書に記したマウスに加え、計3系統のMYO6内耳高発現アイソフォーム特異的挿入9塩基に変異をもつマウスを作製することができ、それらのマウスのうち2系統は9塩基のスプライシングが抑制されることが確認できた。また、これらのマウスの有毛細胞におけるMYO6の発現をすべてのアイソフォームを認識する抗体および高発現アイソフォーム特異的挿入アミノ酸を認識する抗体を用いて調査した結果、全アイソフォームを認識する抗体では有毛細胞に野生型同様のシグナルが検出され、高発現アイソフォーム特異的挿入アミノ酸を認識する抗体ではその発現が欠損していたことから、作製したマウスは高発現アイソフォームを特異的に欠損していることが確認できた。また、これら高発現アイソフォーム特異的欠損マウスの有毛細胞の表現型を調査した結果、外有毛細胞の感覚毛の形態異常および脱落が確認された。この表現型は感覚毛融合を示すMYO6欠損マウスとは大きく異なることからMYO6高発現アイソフォームは他のアイソフォームとは異なる独自の機能をもつことが明らかとなった。 2.MYO6内耳高発現アイソフォームのみを発現するトランスジェニックマウスの作製:昨年度作製したMYO6内耳高発現アイソフォームを発現するトランスジェニックマウスをMYO欠損マウスと交配し、高発現アイソフォームのみを発現するマウスの樹立を試みているが、現在までに目的の遺伝子型のマウスは得られていない。
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