濾過手術の術後成績は、術後の炎症免疫応答の影響を受けていると考えられる。過去に内眼手術を繰り返し受けた症例と初回手術の症例では、術後の炎症免疫応答に大きな違いがみられることが予想される。濾過手術後の濾過胞の形状を解析するために、MRI画像を撮像し、その濾過胞の体積を定量評価し、形状を3次元構築して評価した。52人の患者を対象に術後6ヶ月目以降にT2強調画像でMRI画像を撮像した。最も多い病型は原発開放隅角緑内障で、術前の平均眼圧は、31 mmHgだった。緑内障の点眼薬数は、平均3.5成分を点眼していた。濾過胞が2層形成されている症例が24例、1層形成されている症例が28例の2タイプがあることがわかった。濾過胞の体積と術後眼圧には有意な相関関係は認めなかった。2層形成されている症例の術後眼圧は平均で12.3 mmHgであったが、1層形成されている症例の術後眼圧は14.7 mmHgで、2相形成されている群のほうが、有意に術後眼圧が低いことがわかった。多変量解析にて、1層しか濾過胞が形成されない予後因子を解析したところ、過去に内眼手術を受けた回数が多いことが1層しか濾過胞が形成されないことに関連する予後因子であることがわかった。以上の事から、繰り返し手術をおこなうことで、結膜下組織の炎症を遷延させたり、線維芽細胞の活性化による筋線維芽細胞の増加させたりすることにつながり、線維瘢痕化を増悪させ、濾過胞の形成不全を生じさせていることが示唆された。
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