研究実績の概要 |
毛様体は眼球内の硝子体腔前方に位置し、房水産生を司る臓器である。外傷や眼内増殖で毛様体が障害されると眼球の形態を保てなくなる眼球癆という状態に陥るが現在の医学では眼球癆を治療することは不可能である。2011年に故笹井芳樹先生らのグループよりマウスES細胞から網膜を組織として3次元的に再生できることが報告され(Eiraku M, Nature 2011:472:51)、その後ヒトES細胞でも同様に作製できることが報告された(Nakano T, Cell Stem Cell 2012:10:771)。我々は再生された網膜の周辺部に形態学的に毛様体組織と類似した構造があることを発見し、故笹井先生らのグループと共同で毛様体組織を効率的に再生する方法を開発することに成功した。本研究は再生毛様体を眼内に移植することにより眼球癆の治療法開発、同時に房水にサイトカインや細胞生存因子を分泌させるという新しいドラッグデリバリーの方法を応用した眼疾患の治療法開発を目指す。 マウスES、iPS細胞から眼領域への誘導をおこし、そこから眼領域の中でも網膜や周辺網膜(毛様体、虹彩)といった組織への分化を確認することができている。Kinoshita H, Suzuma K, Kaneko J, Mandai M, Kitaoka T, Takahashi M: Induction of Functional 3D Ciliary Epithelium-Like Structure From Mouse Induced Pluripotent Stem Cells. Invest Ophthalmol Vis Sci 2016:57:153-161. 、その過程で神経節細胞の再生に成功し、視神経の再生への道も開いた。Maekawa Y, Onishi A, Matsushita K, Koide N, Mandai M, Suzuma K, Kitaoka T, Kuwahara A, Ozone C, Nakano T, Eiraku M, Takahashi M: Optimized culture system to induce neurite outgrowth from retinal ganglion cells in three-dimensional retinal aggregates differentiated from mouse and human embryonic stem cells. Curr Eye Res 2016:41:558-568. 今後は動物モデルへの移植研究を行う予定である。
|