研究課題
我々がこれまで行ってきた緑内障眼における房水中の生理活性物質のプロテオミクス的解析により、正常眼(白内障眼)や原発解放隅角緑内障眼と比較して、一般的に濾過手術成績が不良とされるぶどう膜炎続発緑内障・血管新生緑内障では顕著に房水中IL-6、IL-8、MCP-1濃度が高いことが示され、これらの炎症性サイトカインが緑内障濾過手術に負の影響を持つ可能性が示唆されている。この結果を受けて、当該年度ではまず、MCP-1生理活性が結膜局所での炎症反応に与える効果について検証を行った。線維芽細胞由来と筋線維芽細胞由来の細胞培養上清が単核球細胞の遊走能に与える影響をTHP-1細胞株を用いて検証したところ、筋線維芽細胞由来上清の方が遊走能促進効果が弱く、筋線維芽細胞への分化により単核球を遊走が抑えられていることが明らかになった。またこれらTHP-1細胞の遊走は抗MCP-1中和抗体でベースラインまで抑制されることが分かり、MCP-1が本反応の主体をなしていることが明らかになった。次に、末梢組織でマクロファージが主に標識されるLysosome M(LysM)-eGFPマウスにアイカップを装着し、眼球結膜表面にMCP-1負荷を行った。その結果、定常状態と比較しMCP-1投薬後30-60分後にはLysM陽性細胞数が増加し、またその活動性を示す細胞速度が有意に増加していた。これらの結果から、MCP-1は眼内環境不均衡の代表的なマーカーであり、それ単独で結膜創傷治癒過程に強い影響を及ぼしうる可能性を示唆しているものと推測した。
2: おおむね順調に進展している
2光子顕微鏡を用いた動物術後モデルの結膜組織の4次元ライブイメージング法を確立するとともに、結膜炎症病態の解析を進行させている。これまでに我々が行ってきた緑内障眼臨床サンプルを使用したプロテオミクス解析、臨床手術成績評価、in vitroおよびin vivoでの基礎研究のデータから得られた過剰な結膜創傷治癒過程を惹起しうる生理活性物質群の中から、主なターゲット分子としてMCP-1の存在を明らかとすることができた。以上の点から、順調に本研究が進捗しているものと判断する。
本プロジェクトにより、緑内障眼においてMCP-1が眼内環境不均衡の代表的なマーカーであり、それ単独で結膜創傷治癒過程に強い影響を及ぼしうることが証明された。今後、MCP-1が緑内障治療における有力なターゲットとなりえるかについて検証をさらに進行させる。眼内環境の病的状態からのリバランスを目指し、CCR2に着眼した研究を遂行する。CCR2はMCP-1を含めた多くのCCケモカインのレセプターであるため、CCR2阻害によるマクロファージ遊走能や活動性の抑制、さらには緑内障手術成績の改善の可能性について、in vivo緑内障手術モデルを用いた検証を予定する。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 9件) 備考 (1件)
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