研究課題/領域番号 |
15K15637
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂本 泰二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10235179)
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研究分担者 |
園田 祥三 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (20325806)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 薬物送達 / 乳酸 / 画像診断 |
研究実績の概要 |
セラノスティクス(Theranostics)とはtherapeutics(治療)とdiagnostics(診断)のふたつの言葉を結び付けた造語で、診断、治療、誘導(ガイダンス)などの一連の医療行為を一つに統合し、治療時間を短縮し、より安全で効果的なものを医療として提供するという概念の研究である。昨年まで我々は、セラノスティクスの基準物質として、lactic acidの研究を行ってきた。Lactic acidは生体分解性もあり、硝子体内薬物送達物質としては理想的であるが、周辺のpHを変化させる。その際には、神経網膜もさることながら、脈絡膜が変化することがわかった。動物の脈絡膜は、生態観察が可能なほどの厚さがないので、ヒトで行わざるを得ない。光干渉断層計(OCT)の発達に伴い脈絡膜の生体情報が得られるようになってきたので、その影響を調べるプロジェクトを開始した。しかし、そこで脈絡膜の構造を定量定性化するためのソフトウェアを開発した。OCT画像をNiblack法で二値化binarizationしてそれぞれの面積を測定した。その結果、糖尿病網膜症などの病変が進むにしたがって、脈絡膜が肥厚するが、その際は血管腔、実質ともに均等に増加することがわかった。今まで多くの疾患を解析したが、実質と血管腔が同じ比率で増加するものはなく、糖尿病独特のものかもしれないと考えている。また、硝子体内に薬物を投与する際の変化はセラノスティクスの実行に極めて重要であり、それらの解析も行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セラノスティクスにおいては、その介入自体が毒性を持つこともあるので、毒性や環境変化が及ぼす影響を調べた。その成果は本年の米国眼科学会(ARVO2017)で発表する予定であるが、次年度も引き続き以下の様にして進める予定である。一方、脈絡膜研究は大いに進んだ。脈絡膜の光干渉断層計像OCTをC-scanで様々な深さを調べると、今まで見えなかった脈管構造が解明された。これを原田病、中心性漿液性脈絡網膜症などで調べると、網膜の変性部位に一致した変化を示していた。これらは複数の論文に投稿した。Sonoda et al. PlosONE 2016, Kawano et al. Graefes Arch Ophthalmol Clin Sci 2016, Kinoshita et al. Br J Ophthalmol 2016.。現在はそれらを人工知能を使って解析する方法を進めているが、その一部は国内メーカートプコン社と共同研究を行っており、産学連携の成功例と言える。
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今後の研究の推進方策 |
我々は新たにヒト由来の極性網膜色素上皮細胞(RPE)の培養系を確立した(Yoshihara et al. Retina 2017、それ以前はブタ由来のRPE)。本年度は、昨年までの予備実験結果や近年の報告からHumaninと呼ばれるミトコンドリアに局在するペプチドに着目し、これがヒト由来網膜色素上皮細胞に及ぼす影響を調べる。Humaninはアルツハイマー病における神経細胞障害を抑制し、新規治療薬の可能性を秘めたペプチドであるが、HumaninがRPEに及ぼす作用を調べた報告は少ない。そこで、Humaninが酸化ストレス、小胞体(ER)ストレスを与えたRPEに対して保護作用があるかを検討する。具体的には、複数の濃度の過酸化水素やERストレス惹起薬のTunicamycin・ Thapsigarginを一定時間RPEに暴露させて、細胞死をTUNEL染色、MTT試験、Caspaseの定量などで多面的に評価する。Humaninの効果が期待できる場合には、Humaninあり/なしでの酸化ストレス/ERストレスの下流のシグナルを定量し、そのメカニズムを解明する。Humaninを用いた実験結果が思わしくない場合、他のペプチドや実験モデルを用いる。 また上記のように画像解析については、引き続きトプコン社と共同研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
網膜の構造、および成長における変化について新知見を得て、国際眼科学会であるARVO2016(Seattle,USA)などで発表を行った。そこで指摘された追加実験と解析の再編集を行い、2016年11月に論文投稿を行った。その結果、追加実験が必要になり、現在遂行中である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度前半に、再投稿が可能になるが、その際の論文投稿に関わる費用は、3編で約50万を考えており、今回の予算をそれに充てる予定である。
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