研究課題/領域番号 |
15K15639
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
木村 至 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60296663)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 緑内障 / プロスタサイクリン受容体 / 一塩基多型 / 血管生理 |
研究実績の概要 |
緑内障はわが国の失明原因として首位である。そのうち眼圧が正常範囲内にある正常眼圧緑内障(Normal Tension Glaucoma; NTG)が7割以上を占めている。遺伝的要因の存在も考えられているが緑内障の発症メカニズムは未だ充分には解明されておらず、現在の唯一の治療法は眼圧を下降させることである。NTGの場合、眼圧下降が病状の進行を阻止できるかも明らかではない。最近では病因として循環障害が報告されるようになり、血管生理の機能異常の関与が示唆されている。 我々は過去に975例(緑内障675例)のDNAを用いてアミノ酸置換を伴うプロスタサイクリン受容体のSNPについて検索を行った。その結果アミノ酸配列212番目のアルギニンがシステインに置換された変異型(R212C)(refSNP ID: rs4987262)について、緑内障患者のみ14例に発現し正常対照には発現していないことが明らかとなり、緑内障発症の原因遺伝子であることが考えられた(特許第5169306号)。 これは当該遺伝子多型をもつ患者はすべて緑内障を発症していることを示し、また開放隅角緑内障患者の2%は当該SNPが原因となり緑内障を発症していることを示している。同じ母集団においてMyocillinが原因の緑内障患者が4例、Optineurinが原因の患者が2例しか見出されなかったことから考えると、圧倒的に患者数が多いことも示している。 血管因子の遺伝子多型が原因と考えられる緑内障患者が存在し、その変異型受容体をコードする遺伝子が明らかとなった。このことによりいわばプロスタサイクリン受容体異常性緑内障ともいえる緑内障の診断が可能となり、血管因子異常を主因とする緑内障の病態解明と新たな治療法の開発に向けて研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
順天堂大学から埼玉医科大学へ移籍したため、各種実験を始めるための手続き、実験を行うための設備の確認、その使用許可を得る手続き等に時間を費やしている。研究計画上の各実験についての予備調査は進めているものの、人的資源の獲得も1からのスタートであり、当初の研究計画からはやや遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
研究を推進するためにマンパワーの確保が必要であるが、今年度より大学院生が実際の研究を始められる目処が立ち、研究計画を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた動物モデルの作製に予算を充てた研究計画であったが、作製の段階まで至っていないため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にモデル動物作製し研究を進めていく。その過程で次年度使用額が使われることになる。
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