緑内障は日本において失明原因として首位の疾患である。遺伝的要因も考えられており、原因遺伝子も幾つか見出されているが、その発症メカニズムは未だ 充分には解明されていない。最近では病因として循環障害が報告されるようになり、血管生理の機能異常の関与が示唆されている。 我々は過去に975例(緑内障675例)のDNAを用いてアミノ酸置換を伴うプロスタサイクリン受容体のSNPについて検索を行った。その結 果アミノ酸配列212番目のアルギニンがシステインに置換された変異型(R212C)(refSNP ID: rs4987262)について、緑内障患者のみ14例 に発現し正常対照には発現していないことが明らかとなり、緑内障発症の原因遺伝子であることが考えられた(特許第5169306号)。 これは当該遺伝子多型をもつ患者はすべて緑内障を発症していることを示し、また開放隅角緑内障患者の2%は当該SNPが原因とな り緑内障を発症していることを示している。同じ母集団においてMyocillinが原因の緑内障患者が4例、Optineurinが原因の患者が2例 しか見出されなかったことから考えると、圧倒的に患者数が多いことも示している。 血管因子の遺伝子多型が原因と考えられる緑内障患者が存在し、その変異型受容体をコードする遺伝子が明らかとなった。このこと によりいわばプロスタサイクリン受容体異常性緑内障ともいえる緑内障の診断が可能となり、血管因子異常を主因とする緑内障の病態解明と新たな治療法の開発に向けて研究を開始した。 2017年度には薬理学教室との共同研究を開始し、プロスタサイクリン受容体のmRNAを用いて、pef/v5-hisa、pcdna5/frtにある制限酵素kpn1 not1を用いてprimer作製を行い、標識可能な受容体を作ることが可能となった。これを用いた種々の検討を今後行っていく。
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